天頂に浮かぶ3つの月。
月に照らされた空は黒ではなく、深淵の藍色。
足元には波紋が揺れ、先ほどまで追いかけてきた灯りが周囲で揺らめく。
波紋の奥は、空を写した鏡面。
自分の姿を見下ろして、拓也は再び正面へ意識を戻した。

「久しぶり、メビウスモン」

呼ばれた深紅の眼が、瞬きをひとつ。
「そなたらには、久しぶりと言うだけの時が経ったか」
色の波打つ暗色のローブを纏った存在は、言うなれば直立歩行の猫。
黒とダークブラウンの縞模様が、絵本のキャラクターを思い出させる。
笑んだ口元に、拓也は肩を竦めた。
「ああ。人間界では、もう5年経ったし」
経ってしまったんだと続こうとした言葉を、飲み込む。
「ねえメビウスモン。他のみんなは?」
彼が居たのは、ラーナモンの…正確にはラーナモンのエリアにあるルーチェモンの居城だった。
ランタンの灯が、友樹の問いでゆらゆらと彷徨う。
「ここには誰も居らん。十闘士たちは、お前たちへスピリットを送るのが精一杯だったのだろう」
「そう…」
元から繋がりがあった、アグニモンたちだから出来たこと。
繋がりのなかったラーナモンたちは、居ない。
「じゃあ…ルーチェモンはどこに?」
純平の言葉を受けて、メビウスモンはランタンを持たないもう片方の手を翳す。
その手に太い弦が絡みあった杖が現れ、先の宝石が輝いた。
同時に拓也たちの足元が光り、細く白い光で描かれた世界地図が現れた。
拓也から見て左の方で、1点が点滅する。
「光と闇の胎動が、この辺りから発せられている。双方を同時に持つ者は、ルーチェモン以外には存在せん。
…この情報は、"このDWに存在する"私の弟子のものだ。信用に足るだろう」
この範囲だけでも数十km四方になるが、と続く。
「弟子がいるのか?」
「このDWには、ワイズモンという者がな。今は別の人間の子供のところで探求を進めているようだが」
ずっと首を傾げたままであった純平が、メビウスモンを見る。
「あのさぁ、さっきからずっと"あのDW"とか"このDW"とか言ってるけど。
DWと人間界みたいに、DWとDWが別々に存在してるのか?」
少し違う、とメビウスモンは軽く首を振る。
「DWは多層に渡る。次元が違えば存在するデジモンも、理(ことわり)も変わる。
だが、今回のことは違う」
「え?」