お題配布元「Aegis」/宇宙に響く歌

6) 続く命 ーーーーーーーー



「終戦したあの日、私は後悔したのです。"生き残ってしまった"と。
私は1度も銃を握っていません。発射のボタンを押したこともありません。
だからこそ、恐くなりました」

世界を救ったと言われ、聖女と呼ばれ、まるで奇跡のように崇められる。
そのとき既に、『ラクス・クライン』は『人』ではなくなっていた。

「私は『人間』です。けれど人々が求めたのは、理想の言葉だけを発するヒトガタ。
父が殺されたときの私は、少なからず憎しみを持っていた。哀しみだけだなんて、そんな。
キラにフリーダムを渡したあの日のこと、エターナルを返還した日に後悔しました。
ニコルさんのお父上の切なる憶いなど、知ろうともしなかったのですから。
…私は、正義などではなかった。正義を騙る、無知なだけの只の子供でした。
ああ、なんと罪深い!」


貴方だけが…そんな私に気付きましたね、キラ。
だから貴方は、私が貴方に付いていくと言い出しても、何も言わなかった。


『運命狂気』ーーーーーーーー
ラクス












7) 其処に疾走る ーーーーーーーーーー



アタシは、たくさんの人の前で『ラクス・クライン』として歌う。
『ラクス・クライン』として言葉を発し、『ラクス・クライン』として涙を流す。

「演じるって大変。考えてみれば、アタシが慰問コンサートで歌うって場違いだもの」
「…今さらだな」
「だって、確かに気候的には合ってるかもしれないけど、軍の基地よ?」
「それを俺に聞くな。だいたい、"成り代わること"自体喜んで引き受けて、今は酔ってるだろう」
「レイの遠慮なし!アタシだってそろそろ辞めたいの!
早く『ミーア』で欧州ツアー始めなくちゃ、冬になって時期外しちゃう!」
「まあ、本物次第だな」
「そこなのよね〜…。アタシ、ラクス様に憧れてたけど、これじゃあ過去形になりそうだわ」

こんなにもたくさんの、プラントだけじゃなくて地球の人にも慕われてる『ラクス様』。
終戦して、誰もがあの人を待ち望んだ。
でもあの人はアタシたちを見捨てて、逃げてしまった。
だからアタシはこうやって歌い続けて、『ラクス・クライン』を広める。

『ラクス様』が、これ以上逃げられないように。


『黙示の翼』ーーーーーーーーーー
ミーアとレイ












8) 風向き変更 ーーーーーーーーー



「まったく、見事にバラバラになったものだが。どうするんです?」
「ふふっ。可愛い子にはまず、素敵な玩具を与えなければね」
「…自分で取って来いと?」
「あら、使い捨てには出来ない最高の玩具よ?
自分で苦労して手に入れるからこそ、大事にするものでしょう」
「子供に火遊びは厳禁、のはずですがねえ」
「その子供を、喜んで送り出す大人ばかり。火遊び1つで身を守れるなら、安いものよ」
「…言ってることが矛盾してますが」
「玩具の正しい使い方なんて、所詮は大人が作ったモノ。子供の目線じゃあないわね」
「で、貴女は?」
「そうね、庭師にでも。遊ぶなら、綺麗な芝生が良いでしょう?」

この庭(せかい)は、美しく整えてこその遊び場(せかい)だ。


『運命狂気』ーーーーーーーーーーー
ネオとマティス












9) 囁く。けして諦めないと。ーーーーーーーー



ジェネシス。
創世の光。

(兵器に、創世も何もあったもんじゃない!)

兵器は撃つものだ。
兵器は奪うものだ。

(奪うばかりで、何かを与えることは出来ない!)

撃つと決めたのは自分。
奪うと決めたのも自分。

(だから、守るものは1つだけと決めた…!)

奪われないように、撃つことを誓った。
守られる代わりに、守ることを誓った。


ジェネシスの消えたヤキン・ドゥーエ。
半身を失ってなお、飛び続ける。

半身を喪わぬために。


『月と太陽』ーーーーーーーー
キラ












10) 似ている?それとも。ーーーーーーーーーーーーーー



「スウェン、スピネル見なかった?」
「いや。格納庫には居ないのか?」
「うん…。どこ行ったのかな?」

「あ、スウェン!スピネル知らねー?」
「いや。部屋に居ないのか?」
「そう!あーもう、アイツすぐどっか行くし!」

「スウェン、スピネル見てないか?」
「いや。ブリッジに居なかったのか?」
「居なかった。ほんっとどこ行ったんだ…?スウェンに訊けば分かると思ったのに」

「で、なぜお前のことを皆が皆、俺に訊きに来る?」
「カルの地位が、俺の次に高いからだろ?」
「それだけで?」
「後は…ああ、"大抵のことはカルに任せるから"って言ったかな。ちょっと前に」

「…いい加減にして欲しいんですが」
「だから言っただろう?"一番厄介なのは間違いなくアイツだ"と」
「厄介の意味が違うでしょう」
「まあ、今まで俺がやっていたことだからな。この調子で頑張ってくれ、スウェン」
「(何なんだこの部隊は…)」


『黙示の翼』ーーーーーーーーーーーーーー
スウェンと周りの人々







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