黒衣に白鷺を連れた子供。
ルビーの眼に黒い髪の子供は、どこからかふらりとやって来た。







〜ある伝承について。







世界各地に、こんな伝承があった。


…黒衣に白い鳥を連れた子供が、どこからかふらりとやって来る。

ある地域では、鳶の髪にアメジストの眼の少年。
ある地域では、紅の髪にアクアマリンの眼の少女。

身寄りのない子供。
親が出稼ぎに行ってしまった子供。
頼れる者のないそのような子供たちは、ある場所で彼らに出会うのだ。

ある地域では、黒の髪にルビーの眼の少年。
ある地域では、金の髪にルベライトの眼の少女。

彼らが最初に現れるのは、淋しい墓地だった。
野晒しにされた無縁仏たちの墓の前。
白い鳥と共に、彼らは黒衣で佇んでいる。

ある地域では、白い鷺を連れて。
ある地域では、白い梟を連れて。

最初に出会った子供の他に、彼らの姿は見えない。
見えるのは、彼らが連れる白い鳥だけ。
「白い鳥は幸せを連れてくる」と云われるのは、そのためだ。

ある地域では、白い鳩を連れて。
ある地域では、白い鶇を連れて。

孤独の淋しさに耐える子供たちに、彼らは一時の平穏をもたらす。
そして子供たちに転機が来れば、どこかへ去っていく。
二度と同じ子供の前に現れることはない。

そうして彼らはまた、どこかで新たな子供たちと出会うのだ。

どこから来て、どこへ行くのか。
彼らが誰なのか、誰も知らない。

けれど今日もどこかで、彼らは子供たちに微笑みかけているのだろう。



『ある研究者の論文/第16章』











END?








作成日は 07.9.16 らしい。
シンとアウルのアンソロ『365日いっしょ!』に載っている小説の、プロトタイプです。
実際の内容は、これに6割近くの変更が加えられてますが。
目出度く発売日当日を過ぎたので、お試しみたく載せてみました(笑)
ちなみに「鶇(つぐみ)」と読みます。白はあり得ないんですけどね…。

08.1.3


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