偽って偽って。
本物だと叫んで、本物だと笑って。
自分で言っていることが、どんどん嘘に変わっていく。
どこまでが本当で、どこまでが嘘なのか。
境目すらも曖昧になって、自分が誰だか分からない。

だから人は、『名前』を持っている。










【 Mixing real thing. 】










ザフト軍基地ジブラルタル。
今ここには、ザフトの主力と連合の主力が一挙に集まっている。
『ロゴス(理法)』
デュランダルが評議会を無視して暴露した、死の商人について。
俺にとってはどうでもいいことだが、他の人間にはそうじゃなかったらしい。
ユーラシアを中心とした明らかな同胞虐殺に、連合軍はすでに分裂していた。
そして戦争を望む『ロゴス』を撃つ、と言ったデュランダルに賛同し、彼らはここに集まっている。
…敵の敵は味方ってことか。

集まった連合側の代表と、ザフト側の代表を交えた会議。
"ヘヴンズゲート"と呼ばれる基地をどう落とすか、議長たちはそんな作戦会議を開いていたと聞いた。
アタシは本当に、軍に関することは無知だ。
カナードに頼み込んでいろいろ教えてもらったけど、やっぱり難しくて。
その彼は、アタシのいる休憩室の大きな窓からどしゃぶりの雨を見ている。
…地球の天気って、凄い。
彼はコレが普通だって言って、もっと酷いのもあるって言っていた。
人間よりも、地球の方がずっと凄いのね。
そういえば興味本位で、「どうすれば戦争が終わると思う?」って聞いたことがあるの。
返って来た答えは、もしかしたら一番嫌な答えだったのかもしれない。
でもアタシは「ああ、そうかも」とか思っちゃって。
アタシってばカナードに感化されちゃったのかなぁ?
だって、こう言ったのよ?

「一番手っ取り早いのは、人間が滅ぶことだ」

どうすれば戦争が終わるのか。
そう尋ねられて、確か俺はそう答えた。
…我ながら、恐ろしい考え方だと思う。
それ以外に思いつかない自分に、今更ながらに呆れた。
いつものように何か反論が返ってくるかと思ったが、アイツはしばらく首を捻っていた。
考え込む必要のある話でもないと思うが。
しばらくして、あいつの口から随分と捻くれた返答が来た。
「だめだな〜アタシ。ラクス様やってるのに、カナードと同じこと思っちゃった」
俺とこいつの考え方は、恐ろしいほど違っていたはずだ。
それが突然、妙なことを言い出す。
なのでついでに、いつもの問いを投げてみた。

「結局、お前は"ラクス"なのか?」

カナードは不可解そうな顔をして、いつものように訊いて来た。
うん、自分でも変なことを言った気がしたの。
そしたらね、アタシは自分でもびっくりすること言ってたの。
アタシは首を横に振ってね、

「ううん。アタシは"ミーア"よ?」

…そう言ってたの。
今までずっと、答えられなかったのに。
アスランに『ミーア』って呼んでもらって、たくさんの人に『ラクス』って呼んでもらって。
それで満足してたはずなのに、変なの。
でもね、すっごくスッキリしたの。


そっか。
アタシは『ミーア』なんだ。











END?








作成日は 05.10.23 らしいです。
カナードアンソロに載せた【Dream of Imitation.】の続き。
数が少ないカナミアなので、再録してみました。

07.6.11


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