…最悪だ。
いや、たぶんそんな感情は軽く飛び越えてると思う。

『カガリ・ユラ・アスハ』

そんな人間がこのミネルバに乗ってるだけでも、吐き気がするほど嫌なのに。

キレイ事ばっかり言ってて。
理念のために国を犠牲にしたことを誇りみたいに。
軍隊持ってるくせに、馬鹿みたいに"力は争いを生む"って言って。

議長の前だったし、何とか表面では押さえ込んだ感情。
それを分かった上でアイツは抉ってきた。
…アスハの隣りに立ってた、護衛の男。
双子らしく、コーディネイターとナチュラルの差を覗けばアスハとそっくりで。

『君は、なんでそんなにカガリが嫌いなの?』

アンタにそう見えるなら、俺がアンタに向けてる感情はもっとひどいんだ。
"それ"を知ったとき、瞬間的に殺意が芽生えた。
悲壮の漂う笑顔を向けられて、それが嘲笑に変わっただけのこと。
だってアイツは、俺の中に踏み込んで来たから。

誰にも踏み込ませなかった場所に。


『大嫌いだ』


吐き捨てた言葉には、憎悪も嫌悪も哀しみも、全部混ざってた。







…思わず魅入ってしまうものに出会った。

オーブから逃れてきた子。
ザフトに入ったオーブの子。
家族の影がない、少年。

カガリは気付かなかったみたいだけど、僕は何となく気付いた。
…彼は、オーブの理念の犠牲なのだと。
あのときは、カガリにその目が向けられていたけど。
それが僕に向くのは以外と早かった。

『俺の家族はアンタたちに殺されたんだっ!!』

今になって気付いたんだ。
あのとき信じて戦ったことが。
新たな犠牲を生んだことを。
オーブという国の理念を信じた人が。
そのオーブという国側で戦った僕たちのせいで。
犠牲となってしまったことを。
僕たちが、そんな人たちを顧みず。
宇宙へ逃げた形になったことに。

いつだって僕は、憎しみの渦の中心に立っている。


『大嫌いだ』


言い放たれた言葉は、清々しいほどに分かりやすくて。














END








作成日は 05.2.6 らしいです。
キラシンお題をやろうとした痕跡。

07.6.11


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