初めて出てきた赤…じゃないな、ピンクのMSを撃った。
そしたら前に邪魔してきた青と白のMSに邪魔された。
・・・ザフトのくせに何でピンクの庇ってんのさ?
それに気を取られた瞬間に今度は緑と白のMSに不意打ち喰らった。
ビーム無効化も装填する暇なかった。
・・・最悪。
衝撃に怯んだ。
そしたら目の前に赤くて光ってるのが見えた。
・・・ビームソード?
たぶん青いMSのやつだ。
死んだらその時はその時。
そう思ってたけど。
まさか自分が本当に死ぬなんてその瞬間まで思ってもみなかった。
・・まあ、いいや。
最後に見えた赤い光は(敵のだけど)綺麗だったから。
生きてる理由なんてあったか知らないからどーでもいいや。
・・・って思ってたんだけど。
残してきたのが一つ。
・・・キラ、まだ生きてんのかな…?
ー 一閃 ー
「嘘……」
見てしまった。
見えてしまった。
・・・彼が殺される瞬間を。
デュエル、バスター、そしてここで始めてみるピンクのMS。
一機に三機の袋叩き。
戦場では卑怯も何もない。
そんな光景を見るのは何十回目?
いつもと違うのは倒されたMSがキラにとって特別だったこと。
もっと言えば。
・・・そのMSのパイロットがキラの生きる理由。
「シャ…ニ……嘘でしょ…?」
コーディネイターであるにも関わらず連合にいる自分。
僕は生きる理由を一度捨てた。
でも彼に会ってまたその理由を見つけた。
・・・彼の傍にいる。
それが僕の生きる理由。
目の前が怒りで赤く染まる。
意識の底で、キラリと光った"種"が弾けた。
ビームソードを引き抜くと、まさに光の如くピンク色のMSへと向かう。
もう相手を制する戦い方はしない。
「キラ?お前…キラだろっ?!」
ルージュという名前らしいピンク色のMSからパイロットの声が聞こえてきた。
・・・誰の声か、なんて分かり切ってる。
声に答えず、フリーダムはソードをルージュへと振り下ろす。
「「!!」」
双方の動きが止まる。
「キラっ!やめろっっ!!」
ルージュの前に現れたジャスティスに、フリーダムのソードは押さえられていた。
「お前っ…ルージュに乗ってるのが誰か分かってるのかっ?!」
・・・そう言ってくるのが誰なのかも分かり切ってる。
「…邪魔だよ…アスラン」
キラは冷たく言い放つ。
「乗ってるのが誰か、なんて言う必要ないよ。だってシャニを殺したんだから」
「…シャニ……?」
疑問符を出すアスランに対して、カガリには思い当たる節があった。
「…あの緑のMSか?」
映像回線が繋がっているかは知らない。
しかしキラは氷のように冷たい目を二機に向ける。
「前にアスランと戦った時は…まだ後悔したけどね。でも今回は後悔なんてしないよ」
・・・あの時はまだ、自分に人間性が残っていたから。
「…だって僕の生きる理由をカガリは奪ったんだから。アスランも…ね」
フリーダムの白い翼。
それはもう黒い翼へと変わっている。
"天使"という名の付いた"自由の剣"は今、"彼"と同じ"死神"の名を纏った・・・
「ごめん、シャニ。君に追いつくのはもう少し先になりそう…」
最後に彼がいた場所へふわりと微笑む。
「…だから、少しだけ待ってて……」
再び生きる理由を失った僕が、まだこうやって戦う理由…。
・・・それは…
地球を顧みる宇宙で、悲しみと憎しみで黒く染まった翼が……羽ばたいた。
END