コーディネイターなんて大嫌い。好きになれるわけないじゃない。
目の前でパパを見殺しにされて…そんな奴を好きになるなんてどうかしてるんじゃない?

ずっとそう思ってきた。
・・・だからキラを庇うみんなが嫌だった。私を見てくれないみんなが嫌いだった。

なのに…







-たった一つ繋がるもの-









「あなた分かってたじゃない!私、本当はキラの事なんてっ…」
キラとトールがMIAと言われて、サイはずっと一番ショックが大きかったらしいミリアリアの傍にいた。

・・・それで気づいた。
キラがいなくなって私が一人きりになってしまったということが。

誰かに傍にいて欲しくて、何か言って欲しくて…艦内を歩き回っていたらその二人に会った。

"急いでないのなら後にして"




そう言われて驚いた。
少し前までは私のことを一番に考えてくれたのに。
だから言おうとした。
"キラのことなんか好きじゃない"…と。

でもその言葉は遮られた。"違わない、君はキラのことが好きなんだ"…と。






そして…私はいつものように部屋に戻った。

・・・キラといつも居た部屋に。






『トリイ、トリイ』
ボンヤリとしていたらトリイが寄ってきた。
「…私の傍にいてくれるのはお前だけだね」
そう言って首を撫でる。

・・・そう言えばキラはいつもこの子と一緒にいたっけ。

昔、友達から貰ったと聞いた。
その友達はおそらく…ザフトの…イージスのパイロット。


・・・何で私はこのロボットを壊さないの?
このロボットを壊せば…キラの心は全て私の手に来たのに。壊す機会なんて数え切れないくらいあったのに。




トリイを見るとこちらを悲しげに見上げている。




・・・そうだよね。お前の持ち主が死んじゃったんだもんね。哀しいよね。





ポタリとトリイの上に涙が落ちた。





・・・そうよね…悲しい…よね…











「……っ」


『トリイ…?』

溢れてきた涙は止まらない。




・・・なんで私は泣いてるの?
戦って戦って、それでキラに死んでもらうことが私の目的だったんじゃないの?



・・・キラが死んで、晴れ晴れとした気持ちになるはずだったんじゃないの?










すり寄ってきたトリイを手に乗せてそっと抱きしめた。





「お前を壊すなんて、私にはもう…出来ない…」





・・・だってお前を壊したら…キラとの繋がりが全て切れてしまうもの。
お前が…トリイが私の傍に居る限り、キラは必ず私の所に戻ってきてくれる。
死んだなんて認めない。そんなの…許さない。








・・・護ってくれるって言ったよね?

・・・私が傍に居ることを許してくれたよね?


・・・私に弱さを見せてくれたよね?



・・・私の弱さに気づいてくれたよね…?















MIAだなんて信じない。

誰も死体なんか見てないんでしょ?


きっと…生きてる。



キラは私を見捨てたりしない。




誰も信じてなくたって私は信じる。





キラは生きてる。



















ねえキラ、聞こえる?


トリイはちゃんと私が持ってるから。


壊さないように…壊されないように…私が護るから。


大切な友達に貰ったんでしょう?


それならちゃんと傍に置いておかなきゃいけないの、分かるでしょう?。


だから取りに来て。



そしてもう一度…私に会いに来て。




待ってるから。


















ずっと…ずっと待ってるから。











END