ここは連合軍艦・ドミニオンの一角にある部屋。
その時が昼なのか夜なのか、それはそこにいた本人しか分からない。

その部屋には怪しげな実験道具や怪しげな薬が散乱していた。
もくもくとした怪しげな白い煙の中に、人影が一つあった。

「もうすぐ薬の効果が表れるはず…」



そして不気味な笑い声が響いた・・・





ー "ドミニオンの狂科学者"と書いて… ー






「うーん…」

ビクトリアで休息中のドミニオン。
爽やかな日差しが気持ちよく、キラは久々に寝覚めが良かった。
・・・が。
「…あれ?」
どうも天井が高いような気がする。
しかし気のせいだろうと思い直してベッドから下りるが…

ガタンっ!

「いったたた…」
いつものように下りたはずなのに、足が空を切ったように床を踏み外した。
「……?」
床についた自分の手がどうも小さく見える。
「……?!」
立ち上がって周りを見ると、何もかもが大きく見えていた。
「……ひょっとして…」

おそるおそる、床まで届く長い鏡を覗いてみる。
・・・そこには少なくとも三年以上昔の自分の姿が映っていた。


「あーーーーーーーーーーっっ!!!!!」


爽やかな朝、キラの絶叫が響いた。







それぞれの個室にはそれなりの防音設備が整っている。
絶叫とはいえ、その声を直接耳にしたのは隣の部屋にいるシャニくらいだった。
・・・低血圧のシャニはこんなことで起こされると間違いなくキレる。
しかしそれはそれ。
声の主がキラ、というだけで事情は変わってくる。

「…キラ?」
扉をノックするが返事がない。
「キラ!」

「……シャニ?」
二度目の呼びかけで微かな返事があった。
まだ鍵は閉まったままなのでとりあえず扉越しに理由を聞いてみる。
「…何かあったの?」
「あったの、じゃなくておおありだよ……」
ものすごく沈んだ声とともに鍵を外す音がした。
しかし扉を開けても当の本人の姿はない。
「ああもう!早く扉締めてよ!見られちゃう!!」
部屋の内側に向かって開くドアの向こう。
キラの部屋に入って扉を閉めると、扉の陰だった場所ににキラはいた。
・・・いたのだが。
どう見てもその姿は小学校四年生くらい。
つまり身長は少なくとも四十センチ縮んでいる。
外見はそう変わっていないが声が子供らしく高い。

これには多少のことでは動じないシャニも驚いた。
「…何で縮んでるの?」
シャニの口からは当然の疑問が出る。
・・・しかし当のキラにもそれは分からない。
キラはうう〜と頭を抱える。
「そんなの僕が知りたいよ…。別に変なもの食べた覚えはないし。薬も服用してないし……」
そう言ってキラはシャニを見上げた。
普段もだが、キラよりシャニの方が背が高いのでキラは見上げないとシャニを見られない。
この場合は普段よりもさらに40センチ自分が低いのでかなりツライ。

シャニはシャニで何か思い出したらしい。
「…今日ってキラの友達が来るって言ってなかった?」
一昨日あたりに二人はアークエンジェルへ行った。
そこで久々にキラは友人たちと再会し、別にシャニも彼らを嫌だとは感じなかった。

そうだった〜…とキラはもう一度頭を抱える。
「このままで部屋の外に出たくないよ…」
だが外に出ないとトールたちに会えない。
・・・考えた末、キラはトリイと工具箱を取り出して何やら始めた。
「…こういう細かいことはこっちの方が楽だね」
とかなんとか言いながらトリイに何か取り付けている。

『トリイ♪』

しばらくしてシャニのもとへ飛んできたトリイの首辺りには、何やら受信機のようなものが付いていた。
「…何付けたの?」
そう聞くとキラは手に持っている何かに向けてしゃべった。
『ワイヤレスマイクだよ。ちゃんと聞こえてるよね?』
動作を確認すると、キラはシャニに"いってらっしゃい♪"と手を振った。
・・・ブリッジへ自分の代わりに行けというわけだ。
意地でも部屋から出ないらしい。
シャニはため息をつくとトリイと共にブリッジへ向かった。





ブリッジへ向かうと案の定、賑やかだった。
『トリイ!』という声にナタルとトール、ミリアリア、サイがこちらを振り向く。
「あ、シャニさん。おはようございます!」
朝からハイテンションらしいミリイにシャニは少し引くが、とりあえず"おはよう"と返しておく。
「…あの、キラは?」

・・・どうやら盗聴器らしきものも付けていたらしい。
突然トリイがしゃべった。
『おはよう!その声はミリイだね』
「「「「?!」」」」
ミリイを始めとして、ナタルもこれには目を丸くした。
「…ヤマト少尉。休暇中とはいえ一体何を遊んでいるんだ!」
トリイ…いや、キラは答えた。
『遊んでなんかいませんよ!部屋から出られないからトリイとシャニに協力してもらってるんです!!』
・・・気のせいかどうもキラの声が高く感じられる。
「キラに何かあったんですか?」
トールはシャニに尋ねるが、シャニは"行けば分かる"とさっさとブリッジを出た。
残された四人は首を傾げるがとりあえずトリイとシャニの後を追った。





部屋の中に入ると、そこには小学生くらいの少年が一人いた。
「きゃ〜かっわいい!キラにそっくり!!」
そう言うなりミリイはその子に抱きつく。
「ちょっとミリイ!!僕は正真正銘キラだよ!!!」
ああもう、離れてよ!とキラは何とかミリイの腕から脱する。
「え…ホントにキラ?!うそっ!!」
「だってどう見ても小学生だし…なあサイ」
「何で俺に振るんだ…確かにそうだけど」
・・・三人とも好き勝手言ってくれている。
「ちょっとシャニ、何とか言ってやってよ!」
キラはシャニに救いを求めるが、シャニもまた然り。
「…だって本当のことだし……」
・・・さらに。
「キラって昔もこんな可愛かったのね〜」
「少佐と艦長の子供(役)になれるんじゃないか?」
「このままでも支障なさそうだよな」
・・・所詮人事か。

キラは盛大にため息をついてナタルを見た。
だが彼女はキラの予想に反し、青い顔をしてそこに立っていた。
「…ナタルさん?」
キラの呼び掛けにも気づかず、何やら呟いている。
「…まさか……いやしかし……」
そしてナタルはそのまま部屋を飛び出していってしまった。
「あ!ちょっとナタルさん!!」
キラの声にミリイたちは何事かと顔を上げる。
「ナタルさん、何か知ってるんじゃないかしら…」
「追いかけよう!」
三人もまた部屋を飛び出し、後にはまたキラとシャニだけが残った。


「…もう、みんなして好き勝手言って」
もし元に戻れなかったらと考えるとかなり切実だ。
このままではOS解析等は出来ても速さは劣るし、何よりMSを動かせない。
・・・軍の中では足手まといとしか言いようがない。
そんなキラの考えに気づいたのか、シャニはそっとキラを抱きしめた。
「大丈夫。きっと戻れるから」
「シャニ…」
「それに戻ってもらわないと困るし」
「?」
「だってキラ小さすぎてキスも出来ないじゃない」
「…っ///!!」
真っ赤になったキラをぽんと撫でるとシャニは立ち上がった。
「どこ行くの?」
「朝飯持ってくる。どーせここから出ないんだろ?」
そう言って微笑むシャニに、キラはまた真っ赤になった。
・・・とても嬉しかったから。








さて、ナタルたちはドミニオンの一角にある部屋にやってきた。
「ローガン博士!入りますよ!」
ナタルは返事を待たずに扉を開ける。
同時にぶわっと大量の白い煙が溢れてきた。
「な、なんだこれ?!」
「ケホッ、な、何?」
「うわっ何かすごい薬臭いぞ!」
すぐに煙は収まったが、その部屋の様子に更なる驚きが重なった。

その部屋には怪しげな実験道具や怪しげな薬が散乱していた。
そして奥でまだ燻っている怪しげな白い煙の中に、人影が一つあった。
「あら皆さんおそろいで。どうかしたの?」

その人影の主は女性だった。
彼女の名はシュリア・ローガン、ドミニオンの医療班チーフの一人だ。
「い、医療班の人?ホントに…?」
「…つーかすっげえ怪しいし……」
「しかもここ、医者に不必要そうな不気味なものばっかりあるし…」
ミリイたちは小声で呟く。
ナタルは構わずシュリアに詰め寄った。
「ローガン博士!ヤマト少尉の食事に一体何を混ぜたんです?!」
「「「ええっ?!」」」
どうやらこの怪しげな女性がキラが縮んでしまった原因を作ったらしい。
当の本人はあらあら、と悪びれる様子もなかった。
・・・それどころか目を輝かせた。
「じゃあ薬の効果が現れたのね!!キラ君、どこまで子供に戻ったの?!」
さすがのナタルも堪忍袋の緒が切れたようだ。
「ふざけないでくれますか!一体何を考えているんです?!」
「いいじゃない、休暇中なんだから。24時間で元に戻るし」
それだけ言うとシュリアはナタルの後ろにいるミリイたちに話を振る。

「子供のキラ君、すっごく可愛いんじゃない?写真撮ってきてくれる?」

「「「えっ…」」」
・・・確かに可愛かったが、それは認めざる負えないが…

(((何考えてるんだろう、この人…)))








結果:キラ・ヤマトの場合。
×mgで約五年分の幼児化。
幼児化は外見のみに限り、脳に影響なし。
副作用:たぶんなし。

「ふふふ。今度休暇があったらナタルの子供時代を見てみようかしら?
アズラエル理事でもいいわね〜……」





"ドミニオンの狂科学者"と書いて、"シュリア・ローガン"と読む。

それがドミニオンの常識。











END





過去キリリク。

07.6.11