残念ながら今回は、弁解のしようがない。
もっとも、刹那は弁解する気など毛頭なかった。
「…弁解する気もないのか?」
向けられた銃口には何も思わない。
残念ながら向けられ慣れてしまっているし、恐怖という感情は過去に捨てて来た。
苦虫を噛み潰したような、なんて表現が一番合うだろうか。
ロックオンは銃口を真っ直ぐに刹那の眉間へ合わせながら、ますます表情を険しくさせる。
刹那はそんな彼を同じく真っ直ぐに見て、一言だけ。
「あれが、俺の信念だ」
ガンダムのパイロットとして。
刹那・F・セイエイとして。
(…監視者の連中がまた、否決会議を開いているんだろう)
緊迫した空気とそれ以外の境で、ティエリアは睨み合う2人のパイロットを見つめる。
(民間人であっても容赦をしない、スローネ。
俺たちのやり方を生温いと言った、トリニティ)
スローネのやり方は、つまり強者の支配だ。
手っ取り早く確実で、何より世界の悪意のすべてを集める点では、賛辞を送るべきなのか。
(だが…そう、『信念』は。俺たちの持つ、『誇り』は)
ティエリアは軽く息を吐き、ロックオンへ近づいた。
「ティエリア?」
突然に動いたことを訝しげに、彼は視線だけをこちらへ寄越す。
僅かもぶれない銃口については、素直に賛美しよう。
そう心の内で呟いて、ティエリアは銃を握るその右手を降ろさせた。
驚いた彼から文句が出る前に、自らの言葉で矛先を塞ぐ。
「…パイロットとしてどうなるかは、監視者たちの否決待ちだ。
俺たちが手を出すべき事案ではない」
「言ってることが、前と矛盾してねーか?」
「ああ、それは認める」
離れた位置でこちらを見守っていたアレルヤも、眉を寄せた。
「ティエリア…?」
「アレルヤ、お前はどう思った?宇宙で、スローネの軍事介入をどう感じた?
何を思った?」
「それは、」
「エクシアの記憶装置に残っていた。
『スローネの3機を戦争幇助組織として排除する』と」
「刹那が?でも、」
いろいろと、ティエリアにとって不愉快な出来事が続いたこともある。
…『ヴェーダ』を、疑わなければならないことが。
己の神にも等しい『ヴェーダ』が改ざんされているというなら、疑うべき相手は明白だ。
ティエリアは唖然とするアレルヤとロックオンを後ろに、刹那へ近づく。
彼は、誰よりも不可解そうな顔をしていた。
「…刹那・F・セイエイ」
名を呼べば、揺らぐことの無い強い光が返ってくる。
それがあまりに普段と変わらず、口元には自然と笑みが浮かんだ。
「覚えておけ。君がやったことは『子供の特権』だ。
俺たちには、決して出来ないことだと」
だからこそ、今回は見逃す。
この場に居る他のパイロットが決して出来ないことを、いとも簡単にやってのけた子供を。
きっとこの子供は、自分が『こども』であることを認めはしないのだろう。
そっと頭を撫ぜたティエリアの手を、刹那は払おうとはしなかったけれど。
『おとな』じゃないよ
ー 閉じる ー
08.2.9
『こども』でもないけれど。
19話予告ふぁーすといんぷれっしょん。結果は惨敗(笑)
あれやんがはぶられてないし!(そこか)
まあ、実際にこっちの内容だったら、せっつーたちの信頼関係はあんまり伸びなかったかな。