安心する場所の定義は、何だろうか。





『見ツカラナーイ!見ツカラナーイ!』
「そうだなぁハロ。見つかんねえなあ…」

珍しくパイロットが全員、プトレマイオスに集まっている。
それはつまり、大きな作戦が遠からず控えているという意味で。
的中率98%の戦術予報士から臨時にミーティングを開くと言われ、ロックオンはガンダム操縦士たちを探し歩いていた。

「しかしまあ、なーんで艦内放送使わないんだ…?」

探してきてという名の呼んで来いという指示に、反論はしたのだ。
それも敢え無く『ヴェーダと照合したいから』と言われてしまって潰えたが。
別に、探し歩くことが嫌なわけではない。
時間指定も厳しいものではなかったし、自分であれこれ考える時間を貰えたと思えば良い。
なのでロックオンが今抱えている悩みは、目的のメンバーが見つからない、という何とも普通のものだった。

「ロックオン、どう?見つかった?」
「おー、アレルヤ。それがまだ見つかんねーんだよ。そっちは?」
「部屋はどちらも居なかったよ。レストルームも覗いたんだけど…」

早くに発見したのは、食堂で寛いでいたアレルヤで。
彼の一緒に探すよという有り難い申し出の元、狭くはない艦内を二手に分かれて探していた。
人手が二倍になっても、人探しは大変なのだ。
アレルヤが首を傾げる。

「後は…奥の展望室かな。ティエリアはともかく、刹那は居そうだね。
僕はもう一度食堂を回って、先に行ってるよ」
「ああ、悪いな」
『カクレンボー!カクレンボー!』

ロックオンはそのまま展望室へ向かう。
ぴょんぴょんと前を飛び跳ねて行くハロが、先に目的地に着いた。
扉の前に立ったのは同時なので、センサーに感知されるか微妙な部類のハロも、難なく勢いのまま部屋へ飛び込める。


『見ツケター!見ツケ…』
「おーい、刹那にティエリ…」

ガツン!

「喧しい」
「うわっ、危ね…っ?!」


一連の出来事が、一瞬で起こった。
順序立てて説明すると、

1、ハロが展望室へ喋りながら飛び込む。
2、ロックオンが、その後ろから部屋へ足を踏み入れる。
3、ハロに何かが投げつけられ、直撃。
4、誰かの叱責の声が飛ぶ。
5、慣性の法則で、後ろに居たロックオンにハロが直撃未遂。

…となる。
ハロを寸前で受け止めて、ロックオンはその傍に漂っていたものを手に取る。
あまり大きくはない、手軽に持ち運べるサイズの文庫本。
題字を見れば、シェイクスピアの『ハムレット』だった。

「いきなり危ないだろ、ティエリア」

考えずとも投げた主が分かる。
少し離れた位置にある(もちろんこちらを狙うに十分な位置だ)ソファに、その人物は居た。
もちろん、ロックオンが探している人物の片方である。
彼の真っ当な抗議の声にも、ティエリアの普段よりも鋭い眼差しは緩まない。

「喧しいと言っているだろう」
「おま、人が探しにきたってのに…」
「…ん…、なに…?」

さらに文句を続けようとしたところへ、別の声が混ざる。
ソファの背に隠れて見えなかった。

「あれ?刹那もここに居たのか?」

あからさまにこちらへ向けてティエリアがため息を吐いたので、寝ていたのかとアタリをつける。
刹那は軽く伸びをして目を擦った。
まるで猫というか、年相応の顔を見たというか。
扉付近で固まっている1人と1つを一瞥したティエリアは、変な方向に跳ねている刹那の前髪を直してやる。

「…もう少し大丈夫かと思ったんだが」
「いや、いい。ちゃんと寝れたから…助かった」
「そうか」

僅かな会話を最後に、ティエリアが床を蹴る。
そしてロックオンが持っていた本をすいとひったくり、尋ねた。

「何の用だ?」
「え?ああ、スメラギさんが臨時ミーティングを開くってよ」

ティエリアは無言で展望室を出て行く。
ロックオンとハロを、もうひと睨みすることを忘れずに。

「ミーティング…?いつもの部屋か?」

まだ眠たそうな刹那の問いに頷くと、彼もさっさと展望室を後にした。
展望室に1人と1つ取り残されて、ロックオンはとても複雑な心境だった。

『怒ラレタ!怒ラレタ!貧乏クジ!』

ハロの声だけが楽しげに響く。

知っている人、知らない人


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07.11.14

こんな感じの距離感が良い。
せっつーだけが知っているてぃえるん、その逆もまた然り。