スメラギが立案した、アレルヤ奪還作戦。
言う迄もなく先陣を切るのは刹那であり、腕試しも兼ねてロックオンがその援護に入る。
作戦実行までの待機時間、ロックオンは刹那に近づけずにいた。
刹那は、アレルヤが収容されている施設をじっと睨み続けている。

(すべての感情を内側で収めてるとばかり、思ってた)

少なくとも勧誘を受けてから今まで、ロックオンと最も過ごす時間が多かったのが刹那だ。
その間に、そのような印象と確信を得ていた。
しかし。

(MS越しじゃない。生身の戦争を知っているのか)

ちりちりと、太陽の光を一点に集めたときのような殺気が。
じわじわと焼かれ最後には相手を燃やし尽くす激情が、刹那を取り巻いている。
(…兄さん。あんた、凄いヤツと一緒に居たんだな)
俺もまだまだひよっこだ。
苦笑して、ロックオンは刹那へ声を投げた。

「刹那。あと1分で決行時間だ」



突然の襲撃。
カタロンかCBかは分からないが、とにかくこのアロウズの施設が襲撃を受けている。
侵入者を検知した区画は、もっとも厳重な警備が敷かれていた。

(あの場所に収監されているのは、CBのパイロット!)

他数名の者たちと共に施設を駆けるソーマは、銃のグリップを握り直した。
周りの者へ聞こえるように、侵入者を教える。

「侵入したのは、CBの人間だ!」

破壊された通路。
鍵の壊された分厚い扉。
銃を向け、駆け込む。

「動くな!!」

だが居るであろう侵入者を見据えたソーマは、目を見開いた。
こちらに銃を向ける人物の後ろには、拘束を解かれた男ともう1人、別の人間が居る。
ソーマは彼らを見てはいなかった。

「せ、つな…?」

かつての青いガンダムを思い出す、青いパイロットスーツ。
バイザーの向こうからこちらを射抜く、強い視線。
「知り合いですか?ピーリス中尉」
ソーマと同じく銃を向けた他の兵たちが、訝し気に彼女へ問う。
それさえも、ソーマには聞こえていなかった。
「…マリー」
アレルヤの呟きに、誰だそりゃ?と返したのはロックオンだ。
刹那にはどうでも良い。
呆気に取られたようにこちらを見る少女へ、言い放った。


「ソーマ・ピーリス。お前がハレルヤを殺した。お前さえ居なければ、ハレルヤは"居た"。
だから俺は、お前を憎む。赦さない」


彼らの背後の壁が、轟音と共に吹き飛ばされた。
「「…っ、ガンダム?!」」
自動操縦で呼び寄せた00だ。
未練があるらしいアレルヤを引っ張り、ロックオンが伸ばされた手に飛び乗る。
刹那は銃を持っていないもう片方の手で、安全装置を外した手榴弾を投げた。

「伏せろ!!」

咄嗟に叫んだソーマの声に被さった、爆音。
収まったときには、既に彼らもガンダムも消えていた。


「せつ、な…」


破壊された箇所から、青空が見える。
呟いたソーマの頬を、涙がひと雫流れた。

泡になってしまいたい


ー 閉じる ー



08.10.19

せっつーに矢印を向ける人は、不幸になる確率が高い(当サイト比)
ハ、ハレルヤかむばっく…!!(涙)