王留美との会談を終え、リボンズは格別気に入っている定位置で一息つく。
手入れの行き届いた庭が見渡せる、特等席。
ソファも調度も一流品に揃えられているこの部屋は、居心地が良いと仲間内でも評判だ。
ガラス製のローテーブルにはハーブティがセットされ、ふわりとした香りが漂う。
向かいのソファで同じく寛ぐ同僚に、リボンズは笑った。

「機嫌が良いね、リジェネ」

優雅にカップを傾ける彼は、おそらく誰よりも美しい容姿をしている。
敢えて比べることが出来るのは、CBのティエリア・アーデか。
何しろ、このリジェネ・レジェッタと瓜二つだ。

「機嫌が悪くなるはずもないだろ?」

ようやく、待ち望んだエクシアの消息を得られた。
リジェネはすいと切れ長の目を細め、薄緑の液体の向こうに宇宙を描く。
…エクシアはそのままCBに回収され、行方を眩ましたという。
つまりは、パイロットも"そこ"へ戻ったということだ。

「これで、接触する為の手段には困らない」

容姿というものは、様々な部分に影響を及ぼす。
あまりに美しいものは、得てして恐怖の対象にもなる。
冷えた彫像ならばまだしも、リジェネは内に何を飼っているか分からない。
外身にころりと騙されたら、きっと人生お終いだ。

「…災難だね、刹那・F・セイエイも」

彼の何が、リジェネの興味を惹いたのか。
まあ大方のところは、自分たちと繋がりの切れない"ティエリア"だろう。
音もなくカップをソーサーに戻し(いつもながら不思議だ)、リジェネはリボンズを見た。

「ねえリボンズ。私は、人のものに手を出すことが好きなんだ」
「よぉく知っているよ。そうして物事を拗らせて、全部丸投げして終わりだろう?」
「そう。鏡の世界の住人だからね」

彼はよく、"鏡"という言葉を使う。
それはティエリアとの相似を意味したり、自分たちの立ち位置の比喩であったりする。

リボンズやリジェネが立っている"ここ"は、裏であり表だ。
CBの影を演じたり、世界の中枢を裏から見たり、用途は様々。
それをリジェネは、『鏡』と呼んだ。

「いずれ、直接会ってみたいね。こちらへ引き摺り込んでも良い」

刹那・F・セイエイ。
意図せず同じ顔の相手が居たら、気にせずにはいられない。
そういう意味で、リジェネの"刹那"に対する感情はティエリアへの意識故だろう。

「壊さないようにすることを、お勧めするよ」

可哀想に。
鏡の向こうは反転世界、戻る方法が同じとは限らない。
一抹の同情を込めて、リボンズはリジェネにアドバイスを送った。

「ふふ、善処する」

善処?
そんなもの、しないに決まってる。

その翼を手折りにゆこう


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08.10.5

茨道にも程がある!種時代からそうだったさ!(←ヤケ)
私しか楽しくなくても続けますリジェ刹。同志様居ませんか…!(←切実)