CBの母艦は海深く。
次に自機00に乗れるのはいつだろうか、と刹那は広がる水平線を見つめる。
現在のアロウズの旗艦は、海上空母。
MSの離着陸を終え誰も居ない滑走路で、ひとり海風に吹かれる。
「見ーつけた」
微かな気配と共に後ろから伸びてきた手は、やはり白い。
4年でだいぶ背が伸びたと自負しているが、なぜか周りはもっと高い。
どこの組織でも、それは同じらしかった。
この手の主も、刹那より目線の位置が高い。
「ミス・カティとの話は終わったのか」
「ついさっきね。どうやら彼女は、君のところの戦術予報士を知っているみたいだ」
後ろから抱き締められ、感じていた肌寒さが消える。
くすくす、と耳元で笑う気配が、落ち着かない。
「…レヴィ」
「分かってる。ボクは君を怒らせるほど、愚かじゃないからね。
とりあえず中へ戻らない?ここに居ると、面倒なのに掴まるよ」
「…どれだ?」
「そうだね。今回は…、無能な指揮官殿じゃない?」
「戻る」
薄紫の髪をした、男女の性差をまったく感じさせない青年。
つい最近この艦へ配属された彼は、すべての指揮を無視出来るライセンスを持つ。
名はリヴァイヴ・リバイバル。
『イノベイター』という、ティエリアと同じ特殊な人種だという。
艦内へ戻り、自室へと通路を歩く。
彼らとすれ違う誰もが一度足を止め、敬礼を返した。
ライセンスを持つリヴァイヴではなく、ただ1人色の違う軍服を纏う刹那へ。
刹那の部屋は、司令官クラスが与えられる個室だ。
勝手知ったるリヴァイヴは、いつものようにベッドへと寝転がる。
…刹那を巻き込んで。
これもいつものことなので、大人しく一緒に寝転がる。
ここのベッドは、中々に寝心地が良い。
「いつも思うけど、あれだけ単独行動していて、よく疑われないね?」
刹那を抱き枕にしながら、リヴァイヴはまた笑った。
彼が言うのは、刹那が対CBの作戦に滅多に参加しない事実についてだ。
理由はもちろん、あちらで00を駆っているからだと知っている。
「疑われてるんじゃない。黙認されているんだ」
「へえ、誰に?」
「言わなくても分かるだろう」
「まあね」
1人、ミスター・ブシドー。
彼は00と戦いたいだけだから、勧んで手を貸してくれたりする。
そういえば先日も、ビリー・カタギリを言い包めてくれた。
2人、カティ・マネキン。
彼女はアロウズの実情を調べる為に所属し、その実体を疑問視している。
だから勘付きながらも黙認し、わざと許可を出したりする。
3人、セルゲイ・スミルノフ。
彼はアレルヤと共に居ることを選んだマリー(ソーマ)のために、連合軍という立場から援護してくれている。
「なかなかに豪華だよねぇ。まるで世界が、君を中心に回っているみたいだ」
睦言のように甘く呟いて、目の前にある浅黒いうなじに唇を寄せる。
「!」
その不意打ちに、抱き締めた相手のぎょっとしたような気配が伝わった。
逃がさないように捕まえた腕を掴み直して、リヴァイヴは当然のように言う。
「良いじゃない、別に」
「…なにが」
「この艦はこれから2日、移動だけだ。
それに、君はどうでも良いかもしれないけど、ボクはかなり不満なんだよ」
「俺に当たるな」
「それも分かってるよ。でも、君がティエリア・アーデと共に居ると知っているボクの心情を、
少しは察してくれても良いと思わない?」
体勢を変え自分を見下ろしてくるリヴァイヴに、刹那は軽くため息をついた。
…彼の無邪気な性格は、嫌いではない。
「…その間の面倒ごとは、すべて捌けるんだろうな?」
「当然じゃない。君に尽くさない人間が居るなら、是非ともお目に掛かりたいよ」
そうでしょう?刹那。
返答はそれなりに満足いくものだったので、なら良い、と目を閉じる。
降りてきた口付けに応えながら、胸に何の痛みも感じないことに、刹那は微かな絶望を覚えた。
もう罪悪感も見当たらない
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08.11.30
気が向いたらシリーズ化しよう。
レヴィ可愛いよレヴィ。せっつーと戯れ合ってると良い。