【 俺の名は刹那・F・セイエイ。ソレスタルビーイングのガンダムパイロット。
エクシアは俺の剣であり、00は俺の翼だった 】


コーヒー豆を挽く少女の手が、止まる。
「どうしたい?」
それに気づいた店主が、首を傾げて問いかける。
久々に軍の敷地から出て寛いでいたグラハム・エーカーは、店主と店員の遣り取りにおや?とそちらを注視した。


【 イオリアの意志の元に在る"イノベイド"と呼ばれる存在に、俺は伝えたい。
純粋種(イノベイター)と呼ばれる俺の声が、すべての存在に届くというのなら 】


紙芝居を読み聴かせていた女性の声が、止まる。
「ママ、どうしたの?」
「母さん?」
それが不自然だったので、子供たちが不思議そうに声を掛けた。
ちょうど部屋の前を通り掛かったシーリン・パフティヤールも、何だろうかと足を止めた。


【 お前たちがどこでどのようにして、どんな使命を抱いて生きているかは知らない。
けれどそこに俺の言葉が入ってしまうと言うのなら、今ここで、伝える 】


事業の説明をする青年が、考え込むように言葉を止める。
俯き加減に図面を見下ろしているため、その表情は窺えない。
「あの、どうされました…?」
向かいで真剣に検討していたマリナ・イスマイールは、ほんの少し不安げに彼を見返した。


【 俺が伝えたいことは、精一杯に生きること。ただそれだけだ。
…精一杯に生きて、最期に笑って逝ってくれたなら、それが一番良い 】


何峰目かの殉教の山を訪れていたアレルヤ・ハプティズムとマリー・パーファシーは、揃って顔を見合わせる。
互いの眼は、脳量子波の干渉を受けて金色だ。
「刹那、いったい何を…?」
アレルヤの呟きに合わせるように、マリーは視線を彷徨わせた。
「私たちにはイノベイド程の力はないけれど、刹那さんのそれはイノベイドを凌いでいる。
だからこれは、もしかしたら…」
彼女の言葉に、アレルヤも頷く。
「…うん。刹那なりの答えと、未来への"思い"なのかもしれない」
2人は殉教の列を外れ、小休憩も兼ねて傍の木陰へ腰を下ろした。


【 それぞれに、大事なものがあると思う。それが何だって構わない。
誰かに否定されてもその大事なものの為に精一杯生きて、生き抜いてほしい 】


刹那の声は、よく聴こえる。
『まったく、刹那らしいな…』
遠く地球より離れたこの場所にさえ、彼の声は届く。
呟いたティエリア・アーデの横で、良く似た存在が笑った。
『なんというか、因果なものだよね。君はともかく…』
リジェネ・レジェッタは後ろを振り返り、目を細める。
『ねえ?リボンズ』
向けた相手であるリボンズ・アルマークは、軽く肩を竦めてみせた。
今までと同じに見えて、それぞれが今までとは違う。
己も含めて、ヴェーダのメモリを媒体とした電子の固まりのようなもの。
不思議なものだ、とティエリアは思う。
それでも自分たちの声は、脳量子波を扱える者たちへ届くのだ。


【 使命に縛られる必要は無い。ましてや、俺の声なんかに縛られる必要もない。
ただ、自分に恥じないように生きてくれ。

…俺が伝えたかったのは、それだけだ 】


ふっつりと、刹那からの干渉が途絶えた。
リヴァイヴは思わず、己の両目を片手で覆う。
「…ああもう、本当に君は」
自然と笑いがこみ上げて来た。
瓦礫の町より戻って来たその姿を見つけて、笑みは苦笑に変わる。
「レヴィ?」
訝しげに名で問う彼へ、揚々と告げた。

「僕は断言するよ、刹那。
この先君が窮地に陥るようなことがあれば、すべてのイノベイドが君の為に動く」

刹那は意味が分からない、と眉を顰める。
「なぜ?」
理由にまったく見当がつかないらしい彼に、まだ駄目かとリヴァイヴは軽い溜め息を吐いた。
(なかなか自覚してくれないなあ…)
刹那に欠けているのは、『誰かの為に自分を守る』姿勢だ。
(ああ、でもこれも…)
だから、なのだろう。
彼から目を離せなくなってしまうのは。

導(しるべ)であり、光


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10.9.22/up 13.4.28

同じくアップ忘れ。
まだ続きがあった気がするけど、キリが良いのでここで終幕。