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たぶん19話関連、ゼロバレ+寝返り。
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「枢木首相は殺害された。今ここにある現実は、1人の殺人者のエゴの結果だ」


生身で対峙しているのは、『ゼロ』。
ランスロットの出動時といえば、『黒の騎士団』絡みしかない。
銃を突き付けられながら、枢木スザクは驚愕に目を見張った。

(どうして、この男がそれを知ってる…?!)

まだ『日本』であった頃。
スザクの父、枢木ゲンブはブリタニアの侵攻に際し、徹底抗戦を唱えた。
だが彼は、その徹底抗戦を唱える軍を諌める為に自害したとされる。

(なぜ、知ってる?!誰も知らないのに!!)

その矛盾の真実を知るのは、スザクだけだった。
『黒の騎士団』の他の人間とは10m以上の距離があり、話を聞かれることはない。
しかし"なぜ"という言葉ばかりが、頭の中を駆け巡る。
混乱するスザクを他所に、仮面の下の表情を悟らせぬ『ゼロ』は続けた。


「枢木スザク。これが、私に出来る最後の折衝だ」


瓦礫の向こうにある場違いな青い空が、恨めしい。
『ゼロ』の物言いも、腹立たしい。

「…なぜ、それをお前が知っている?」

笑う気配がした。

「自分で探せ。すぐに判るさ」

「……」

その通りだ。
これは消去法を使えば良い。
ふと、青い空と同じくらい場違いに、親友を思い出した。


『物語は、必要だろう』


(そうだ。あのとき、妙な男がそれを暴いた)

薄暗い、学園の塔にひっそりとある教会で。
二度と現れてはいないらしいから、あの男ではない。
ならば、その『物語』を作った人間か。

(違うな。この男は、そういう手は使わないだろう)

誰かから手に入れた話を、脅迫に使うほど愚かではない。
何より、過去の話は当事者以外に真偽を判別出来ない。

ならば、誰だ。

(他に、真相を知っている人間は居ない…)

本当に?

たった今、誰かを故意に外さなかったか。



「ーーーー」



呆然と呟かれた声は、目の前の人間にも辛うじて届いた。
『ゼロ』…否、ルルーシュは呆れて笑う。

「気付くのが遅すぎる。だから馬鹿だと言うんだ、お前は」

それは、スザクに対する彼の口癖で。
酷いなあと思っても、言ったのが彼ならば無条件で許してしまう。


「嘘、だろ…?」


『ゼロ』に救い出されたとき、自分で言った。
友達にもよく言われる、と。

彼の人は、ブリタニアをぶっ壊すと言った。
7年前のあの日も、7年ぶりに再会したあのときも。

一度『ゼロ』を追いつめたとき、黄緑の髪の少女が邪魔をした。

再会したあのときに、2人で救い出した少女だった。
彼は、彼女を連れて逃げたんだと自分で結論付けたはずだ。


『ゼロ』が存在を示さず現れたのは、そのほんの数日後ではなかったか。



時間だけが無為に過ぎる。
不意にインカムから軍司令部の声が入り、聞いたスザクの表情が変わる。


「早くここから離れろ!ミサイルが撃ち込まれる!」

「?!」

『ゼロ!大量の熱源が接近してる!!』


部下からの情報を受けたルルーシュの決断は、早かった。
切っていた通信機の電源を入れると、即座に撤退命令を下す。


「全軍撤退!各自ポイント03まで退け!」

『待って!ゼロ、貴方は?!』

「すぐに追う!カレン、お前が先導しろ!」

『…っ、了解!』


命じれば、紅蓮弐式を駆る彼女は必ず『ゼロ』に従う。
不承不承に背を向けた紅蓮弐式に続き、ほとんどすべてのKMFがその場を離れる。
離れなかったのは、月下を駆る藤堂鏡志郎とその部下。

「何をしている、藤堂!早く退け!」

通信相手にハッとしたスザクは、『ゼロ』の手から通信機を奪う。


「なっ?!」

「枢木スザクです。藤堂さん、聞こえますか?」

『スザク君?!』


上と下とで驚愕の声が落ちる中、スザクはやはり場違いなほど、落ち着いていた。
ミサイルが到達するまで、あと2分。


「『ゼロ』は必ず無傷で送り届けます。だから、早く行ってください」

『フン、容易く信じられるか!』

『ですよねえ。なんたって、望まれながら裏切った人間だし』

『次はブリタニアへの裏切りを演じると?』

『どうするんですか?藤堂さんは』

『……』


同じく通信を傍受していた藤堂の部下、特に朝比奈と千葉は即座に否定した。
朝比奈の言った言葉は、キョウトがかつて、時の首相の息子を反攻の旗印にと願ったことを示す。
藤堂は間を置き、スザクへ問う。


『以前、お前は志を説いたな。あれは嘘だったということか?』

「いいえ」

『…では、"ゼロを助ける"と言った先ほどの言葉に、二言はないな?』

「はい」


次いでスザクへ返ったのは、押し殺した笑い声だ。
残り1分。


『矛盾した奴だ!良いだろう。ならばその矛盾、『ゼロ』と共にゆっくりと聞かせてもらおうか』


身を翻した5機の月下に胸を撫で下ろして、スザクは通信機を返す。
一連の行動を見ていたルルーシュは、輪を掛けて呆れた。


「何を考えているんだ、お前は」

「君を護ることを」

「!」


通信機を受け取る為に伸ばした腕を、逆に掴まれる。

「仮面を、外してくれないかな?」

今なら誰も居ない。

これ見よがしにため息をついて、『ゼロ』は仮面を外す。
その素顔は、スザクが思い描いた人で間違いは無く。


「…どうしようもない馬鹿だな。本当に」


けれど、互いに笑った。
end.

2007.3.9

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