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カグルルC←スザク?たぶん21話派生。
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『"枢木スザク"。その名を捨てないお前に、最初で最後の、一度きりの邂逅を許そう』
アッシュフォード学園の地下。
水循環の中枢として広場のようになっている、空間。
「レディを待たせるとは、感心しませんね。"スザク"」
さらりと揺れた黒い髪、紅白で彩られた装束。
翡翠の眼は薄暗い光の中で、宝石のように強く存在していた。
「神楽耶…?!なぜここに…」
天皇家の従姉妹だった。
彼女はにこりと微笑んで、答える。
「貴方をここへ呼んだ1人が、わたくしだから」
「1人…?」
「もう1人は、私だ」
「!」
ふわり、と上から人が落ちてきた。
正確には、降り立った。
煌めくライトグリーンの髪に、ブリタニア軍の囚人服。
「君はゼロのっ!!」
『黒の騎士団』の首領である『ゼロ』を、追いつめる度に邪魔をしてきた少女だった。
迷わず銃を向け、嫌な想像に声が低くなる。
「まさか、神楽耶を人質に…?!」
「馬鹿か。こいつを人質にするのはお前の方だろう?第3皇女の筆頭騎士」
言われた意味を、咄嗟に掴みかねた。
囚人服の少女は心底馬鹿にしたように顎を上げ、拍子に髪が左右に揺れる。
遅れて意味を理解したスザクは、引き金を絞る指に力を込めた。
ころころと笑う声が響く。
「わたくしが貴方にわたくしの名を呼ぶ権利を与えるのは、この場で終わりです。
今後一切、わたくしの名もあの方の名も、呼ぶことは許さない」
神楽耶は穏やかにそう告げたが、翡翠の眼は笑ってなどいなかった。
囚人服の少女は、なおもスザクを嘲笑う。
「今生天皇に銃を向けたままだぞ?『日本人』のくせに」
ぎりと唇を噛んで、スザクは銃を下ろした。
腹立たしいが彼女が言ったことは真実で、黒髪の少女は確かに天皇であった。
キョウト六家が、イレヴンと呼ばれる日本人が、『日本』の砦として崇める者。
手紙の主は、間違いなく彼女だ。
「なぜ、僕をこの場所へ呼んだ?」
囚人服の少女については保留にして、従姉妹へ問う。
彼女は昔と変わらず、楽しげに笑った。
「罪を胸に据え名を捨てない貴方への、せめてもの情け。最初で最後の、一度きりの邂逅を。
あの方とわたくしが受けた貴方の裏切りの苦、無知の姫の日本人へ対する愚かな発言の苦。
それを貴方に、一生の疵として贈りましょう。『日本人』であった貴方へ」
彼女は誰を引き合いにしているのだろうか。
"あの方"と彼女が言っているのは、誰なのだろうか。
「会長に何を頼み込んだのかと思えば…。足りない時間をさらに減らしてくれるな」
彼女たちの更に奥の暗がりから、別の声が入った。
聞き間違えるはずもない。
「ル、ルーシュ…?」
アッシュフォード学園のクラブハウスに住む彼が、ここにいて可笑しいとは思わない。
可笑しいと思うなら、クスクスと笑い続ける2人の少女の方だ。
コツコツ、と靴音が近づいてくる。
「だって、不公平だと思ったものですから」
「あの女も、同じことを考えていたようだぞ?」
妹もな、と囚人服の少女がパサリと自身の髪の毛を払う。
"あの女"が誰かは分からない。
しかし"妹"が、彼の妹であるナナリーということは容易に予想出来る。
暗がりから出て来た親友は、2人の少女のすぐ傍に立った。
「…え?」
黒に限りなく近い青の服。
金色の縁取りは纏うマントにも描かれていて、闇に浮かんだ。
その右腕に抱えられていたのは、
『ゼロ』の仮面。
目の前に現れた親友は、世界に名を轟かすテロリストとしてそこに立っていた。
揺るぎなく、皇族として持つ威圧の力もそのままに。
スザクの姿を認めた彼は驚く様子を見せた後、美しく嗤った。
「今日の作戦は、随分と楽に終わりそうだな」
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捏造V様+ルルーシュ。
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真っ黒な空間に居る。
音もなく光もない。
足元は鏡のように映る水。
一歩踏み出せば、音を伴わない波紋がいくつもの円となり広がる。
「…夢か」
ルルーシュは自分に聞かせるように呟いた。
夢以外の何者でもないだろう。
【ようやく来たか。我が王よ】
背後からの声に振り返る。
声の主は考えた可能性の、どれとも違った。
【まったく、探しくたびれたぞ】
にぃと口元を吊り上げ嗤ったのは、10歳程度の幼い少女。
自分の背丈よりも長く波打つ金髪は、水面の床に流れ落ちている。
黒と白で構成された服と合わせ、まるで人形のような風貌。
表情だけが、不釣り合いに浮いていた。
答えないルルーシュなど気にしないのか、少女は笑みを収めない。
【名を替えられては、私も捜しようがないんだ。Cのおかげで、見失わずに済んだが】
「…C?」
疑問を返した彼に、少女はゆっくりと頷いた。
見た目に似合わない笑みと言葉遣いは、誰かを思い出す。
【私の名はV.V.(ヴィーツー)。Cと同じく、異なる摂理に生きる者】
彼女は共犯者であるC.C.によく似ていた。
名前の構成も、まったく同じ。
ルルーシュのもの問いたげな視線に気付き、彼女はクククと笑い声を漏らす。
【そう。そのCと同じだ。もっとも、Cは私の目であり足でもあるが】
何度か助言もくれてやった。
式根島から救ったのは、共同作業。
「…意味が分からないが」
【構わない。まだそれまでは遠いさ、我が王よ。…ときに、】
V.V.は、すいと右手を差し出した。
まっすぐに、いつだったかC.C.が差し出して来たように。
【ヴィ・ブリタニアの名は捨てた。ランペルージもいずれ捨てる。ゼロも同じ。
私と誓いを交わせる名は、どれだ?】
「なに…?」
【Cと契約を交わしたのだろう?ならば、私とも結んでもらおう。
私の願いは、Cの願いと同じだ。お前の願いが叶った後に、私の願いを1つだけ叶えてもらう】
選択の余地は与えられているのか否か。
だがルルーシュは、わずかも迷うことなどなかった。
「良いだろう、V.V.。その契約、『ルルーシュ』の名の下に結ぼう」
2人の足元に、ギアスの紋章が紅く浮かぶ。
V.V.は変わらぬ笑みで、厳かに告げた。
【我が王、ルルーシュ。Cの世界と共に、新たなVの世界を、お前に】
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22話派生、騎士団幹部たち(副司令批判の残骸)
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「騎士団ごと、特区に入ることは出来ないのか?」
耳を疑わなかった人間は、はたして居るのだろうか。
カレンはまさにその筆頭だった。
「扇さん…?本気なの?」
冗談を言わない人間であると知っていて、それを期待してしまった。
「何言ってんだよ扇。あんな特区なんて胡散臭いもんを信用すんのか?」
珍しく玉城が正論を言ったと思ったのは、はたして何名か。
もちろん褒め言葉だ。
「確かに下の方の団員が、騎士団を抜け始めてるのは知ってる。
でも、所詮はお飾りの皇女でしょう?何を根拠に信用するの?」
「同〜感。ブリタニアを信じる思考が分からない。ああ、ブリタニア人は別」
戸惑うカレンの言葉に、四聖剣の朝比奈が声を揃える。
最後に付け加えたのは、『ゼロ』がブリタニア人であること知っているからだ。
釣られるように、部屋に集う幹部たちは各々の意見を述べていく。
「特区に賛同すれば騎士団は意味を亡くす。しかし反対すれば、自由と平等の敵となる…」
「特区に参加したらどうなると思う?まずは武器を取り上げられるな。反攻の力を失う」
「それは困るな〜ぁ。私の子供たちが壊されちゃうじゃない。特区はんたーい」
「特区は日本独立を目指すものではない。根本的に違う」
「狭い箱庭でしょう?特区って」
「まあ、最後に決定するのはゼロだけどな」
特区賛同派は、扇だけのようだ。
彼が反論を言い募ろうとしたとき、扉が開いた。
「ほう?幹部がお揃いで議論は白熱か」
入って来たのはゼロではなく、対照的な白のパイロットスーツに身を包んだC.C.だった。
彼女は迷うことなくゼロの定位置となっているソファの、すぐ隣に腰を下ろす。
ディートハルトが尋ねた。
「ガヴェインを出すのですか?ゼロは何をお考えで…?」
「奴は策を練っている真っ最中だ。邪魔はよせ」
「…珍しいですね。貴方がそうやって"ゼロの行動の為に"意見するのは」
C.C.はディートハルトを見上げ、口の端を吊り上げる。
尊大で高慢な態度は、気位の高いネコ科の動物を思わせるものだ。
「私はゼロの共犯者であって、騎士団の人間ではない。
…が、奴の意見くらいなら持って来てやったぞ?」
全員の目が一斉に集まる。
指を順番に立てて、C.C.は1つずつ語る。
「1、日本が独立国家となる道筋が途絶えること。
2、ブリタニア側に選ばれた日本人のみが入ること。
3、お飾りの皇女が発言したこと。
要約するとこうなる。まあ、奴の答えなど聞くまでもないだろう?」
その通りだ。
3つに纏められた簡潔な意見は、幹部たちの意見の大部分をカバーしている。
言ってしまえば、『信じられない』の一言で済む。
(以降のデータ不明…)
end.
2007.3.26
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