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ロイミレルル。続き物にしようとしたもの。
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「ふふん、やっぱりねぇ…」

技術部の端末を弄りながら、ロイドは眼鏡の奥の目を細める。
ディスプレイに映るものと考えていることは、まったくの別物だ。
(妙なところから見合いの話が来たけど、考えずにOK出して良かったなぁ)
技術部を尋ねて来た見合い相手は、アッシュフォード学園理事の孫娘だった。
(ミレイ・アッシュフォード。高等部の生徒会長だとか言ってたねえ)
彼女とこちらの年齢差は一回りあるが、政略結婚であることは明白なので問題はない。

さて、ロイドは見合いの話が来れば「面倒だ」と即日で蹴る人種だ。
そんな彼が珍しく興味を持ったのは、『アッシュフォード』という名前だった。
(直球で攻めて見ようかなぁ?結構食えない子みたいだしねえ、あのお嬢さん)
彼女は理知という刃を、上手いこと隠しているようだ。

「セシルく〜ん、ちょっと高等部まで行ってくるよ〜」
「え?あ、分かりました。スザク君は?」
「別にいいよぅ。今日は何も無いみたいだから、かーいさ〜ん」

お疲れ〜と手を振り、ロイドは軽い足取りで技術部が間借りしている、学園の大学部を出る。
アッシュフォード本家へ赴くと、すでに『婚約者』とされているのかすぐに通された。
(ま、当分は保留のままかな?)
自分も彼女も、『結婚』=『家名を繋ぐ』くらいにしか考えていない。
近づいてくる足跡にぐるりと首を巡らせれば、話中の彼女がやって来た。

「ロイド伯爵!」

ミレイ・アッシュフォードは家からの呼び出しに、正直面食らっていた。
『婚約者』となってしまったらしい人間が来ているというのは、ミレイには不可解だったのだ。
(だってあの人、そもそも人間に興味なさそうじゃない)
自分に女の魅力がないとは、残念ながら欠片も思ったことがない。
とりあえず制服のまま本家へ戻り、ロイドを発見する。

「仰ってくだされば、そちらまで伺いましたのに」
「いいよいいよ。ボクが気まぐれでいきなり来ただけだからね」

一般的に貴族というものは、礼節などを大変重んじる傾向がある。
科学者の白衣のまま、しかもアポイントなし。
そんな男が、ミレイはどちらかと言えば嫌いではなかった。
(本当のことは言わないけれど、嘘はつかないタイプの人間よね)
勝手ながら、そんな推測を持っている。
「で、早速なんだけど」
座っていたソファから立ち上がり、ロイドはミレイの顔を覗き込むように前屈みになる。

「第3世代KMF『ガニメデ』。アレの本物があるって聞いてサ、見せて欲しいな〜って」

なるほど。
(どういうつもりか分からないけど、断る理由もないわね)
見合いの場がKMFの開発部だったのだ。
この程度では驚かない。
にこりと笑い、ミレイは頷いた。

「分かりましたわ。祖父に許可を頂いてきますので、少々お待ちを」

部屋を出て行く彼女を見送って、ロイドは笑みを深めた。
「ほーんと、食えないねぇ。でも嫌いじゃないよ?」
ああまで潔いと、格好良いと素直に思う。
「…ってことでぇ」
いつものようにポケットへ手を突っ込み、思惑を巡らせる。

(僕の考えているコトが君の核心を付けば、大成功だ)


どう転んでも、ロイドにすれば良いこと尽くしなのだ。
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24話突発。「世界は、」フライング。
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ランスロットは、あっという間にアヴァロンを飛び出して行ってしまった。
殴られた頬を擦りながら、ロイドは笑う。

「なーんか殴られ損な感じするんですけどぉ。これで良いんでしょう?"キラ殿下"」

セシルがハッと格納庫の入り口を振り返れば、第10皇子が肩を竦めて暗がりから出て来た。
第9皇子カナードの実弟、キラ・イーグ・ブリタニア。
彼は世界規模の『かくれんぼ』の後、第2皇子シュナイゼルの右腕として存在している。
…特派は飛行戦艦アヴァロンと第7世代KMFランスロットを擁する、シュナイゼルの部隊。
それをこのエリア11で預かっている実質的指揮官が、キラだ。
武力よりも対話を重視する温和な皇子として有名であるが、はたしてそれは真実かどうか。
彼は作戦に関して、敵を唯の1人も生かさない。
ロイドはキラという人物に対し、利己的で自分たちさえいとも簡単に殺せる人物だと思っている。
相手もその考えを見抜いているだろう。
その分、面白い話をしてくれるのだ。

「ご苦労様。さて、どこへ向かえば一番とばっちりが来ないかな」

ほら、今もこうやって、彼は第2皇女たちなど認識もしていない。
セシルがおそるおそる尋ねる。

「あの、スザク君とランスロットは…」
「別に良いよ。ラクシャータの手に渡るだけだし」
「…って、それ嫌ですよぅ殿下!僕のランスロットが分解される!!」
「スザク君は…?」

ロイドの叫びをまるで無視して、セシルはなおも尋ねる。
キラは酷薄な笑みを浮かべた。


「裏切り者に用はない。戻って来たら殺すまでだ」


わーお。
ランスロットへの懸念を一時置いて、ロイドは感嘆の意味で笑い声をあげた。

「あはっ、言い切りましたね」

問えば返るのはやはり、笑い声。

「デヴァイサーが居なくて困るのは僕じゃない。
使えそうならカナードが使うだろうけど…アレはカナードの嫌いなタイプだからね」
「カナード殿下ですかぁ。いちおう、キラ殿下はシュナイゼル殿下の右腕ですよぉ?」
「そ、"いちおう"ね。セシル、ロイドの手当してあげてね」
「あ、は、ハイ!」

用は済んだとばかりに、キラは彼らを残して格納庫を出た。
彼の後ろ姿を見送ったセシルは、ロイドへ不安げに呟く。

「スザク君、『ゼロ』に殺されるんじゃ…」

ロイドは肩を竦め、歪んだ眼鏡を直す。

「どうだろうねぇ。戦闘技術は高いから、まあ大丈夫なんじゃない?
それにキラ殿下じゃないけど、カナード殿下が利用価値を見出してくれれば生き残るデショ」
「あの、なぜカナード殿下なんですか?あの方は…」
「政庁に居るわけないよ。カナード殿下はね、綺麗な『鳥』を育てておられるんだ」
「はぁ…」
「その『鳥』はね、上手いこと育てればうちの殿下さえも凌ぐ大物になる。
現に、たった1人で巨大な組織を創り上げたからねえ」
「…あの、それって」
「ま、僕らはしばらく殿下の手腕を見学していれば良い。
シュナイゼル殿下と並び称される、『黒鳥』の手腕を…ね」


当面の問題は、可愛いランスロットが無事に済むかどうかだ。
end.

2007.7.30

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