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01)笑顔には2つの意味がある。
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『黒の騎士団』と、『Schwarze Vogel der Ruhe』。
どちらも客観的に見ている貴重な人間としての意見を言わせてもらうと、

「…1人を頂点としている組織としては、違いすぎる」

という言葉が出た。
それが当然だということは、知った瞬間に理解している。
方やテロリストの集まり、方や世界的にも実力が折り紙付きの劇団。
ただ、まったく違うかと言えばそうでもない。

「…よく似ている部分も多いがな。特に頂点の人間は」

すると向かいのソファに座る劇団の主が、不思議そうに眉を寄せた。
「似てる?俺とルルーシュが?」
「そうだ。ヤツも無自覚だろうが、私から見ればよく似ている」
「へえ…」
何が似ているのか、当事者たちには分かり難いのかもしれない。
『皇族』という理由で説明出来ないこともないが、彼らの立ち振る舞いは本当によく似ていた。
"自分"という人間を使い分けるという点も。
しかし。
「短い付き合いだが、決定的な違いも見つけた」
現在の契約者…騎士団の主と、彼が文字通り己の"後ろ盾"として捜し出した、この劇団の主。
生い立ちや過去、生き方ではない。
それは立ち振る舞いの延長線、もしくはその手前。

「嘘を吐くために笑うか、真実を錯覚させるために笑うか。それがお前とアイツの、決定的な違い」

見ていて遣る瀬なくなる笑顔など、初めて見た。
優しさに満ちた無償の愛を、成人にも至っていない子供が持っているなど思いもしなかった。
「アイツは笑顔で嘘を吐く。
大丈夫だと笑い、ただの夜遊びだと笑い、有り難うと笑う。
だが、お前はまったくの逆だろう?
化けていることを笑顔で隠し、完璧な笑みは吐いた真実を与太話に変えてしまう」
劇団の主は不敵に"笑った"。
「言葉も笑顔も、本質は同じだろ?嘘か本当か、判断すべきはそれだけだ」
判断するのは笑顔を浮かべる人間ではなく、それを受け取る人間だと。

(だから、この男は止めておけと言ったんだ)

黒い鳥は神の使いであり、また、死を呼ぶ不吉である。
この劇団の本質がどちらにあるのか、正しい判断を下せる人間など存在しないのだ。




−−− 黒鳥の笑みと魔女の危惧。
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02)舞台裏こそすべての根源。
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「お前たちの主は、上手いこと使いそうだな」
「何を?」
「ヤツの綺麗な顔さ。利用出来るものは、すべて利用しそうだ」
「違いますよ、C.C.様。カナード様は自身のことには無頓着です」
「使い途を心得てるようにしか見えねーけどな。演技してるのは、"カナリア"のときだけだぜ?」
「…それは詐欺だろう」
「本人に言えよ」
「ですが…そうですね。"そう見える"のは、やはりヴィア様の教育の賜物というか…」
「ヤツの母親か。いったいどんな奇天烈人間なんだ?」
「"美人に育つ子"と"可愛らしく育つ子"が欲しかったと、カナード様とキラ様を溺愛しておられます」
「…溺愛の方向が違わないか」
「ですが、継承権争いでトップを競うまでに育て上げたのも、やはりヴィア様です」
「…ナーリエ。お前、今"溺愛の方向"を否定しなかったよな」
「否定するための材料が、"8年の空白"だけですからね。ところで何のお話でした?」
「お前たちの主が、自分の容姿を上手いこと使ってるという話だ」
「ルルーシュ殿下は違うのか?あの人も、相当美人な部類じゃないか」
「ああ、それは否定しない。だから困るんだ」
「何で?」
「アイツは自分の容姿の使い方を、まったく分かっていない。ここの主とは違う意味で。
お前たちに演技指導でもして貰えば、少しはマシになるかと思ってな」
「…猫被りが上手ければ、出来そうだな」
「それは常日頃だから案ずるな。もう1人の猫被りが負けを認めるくらいだ」
「あ、そう。俺は演じることに関してはさっぱりだから」
「いつだったか、演出が嘆いておりましたからね」
「まだ根に持ってんのかよ…」
「それは当然でしょう。サイレントが可能なら、すぐにでも作りますよ?脚本が」
「…やめてくれ。本当にやりそうだ」
「ほう、何かあったのか?」
「ええ。当劇団でもっとも立ち回りが巧いのは、カナード様とシュヴァーンですから。
特にシュヴァーンは、それが本業ですし」
「なるほどな。この騎士は、"黙っていれば映えるのに"なタイプか」
「その通りです」
「つーか、そんな話をしに来たわけじゃないだろ?お前」
「そうだったな。まあルルーシュも、『ゼロ』は演技で成り立っているが」
「あの方は仮面を被らなければならない分、劇場型の方にベクトルが傾いておられますね。
そうだ、C.C.様。次の公演に空きの役柄があるのですが、やってみません?」
「私がか?」
「ルルーシュ様でも構いませんよ?」
「ふん、面白そうじゃないか。しかし、"ルルーシュ"だとバレるのは不味い」
「それこそ、うちの殿下を真似れば良い話だろ?」
「…それもそうか。よし、今日にでも引きずり込んでみよう」
「楽しみですね。色好い返事をお待ち致しております」
「ああ、邪魔したな」




−−− 黒鳥の白鳥と金糸雀、そして魔女。
2007.12.6

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