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10話派生、アニャ→ルル
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スザクが部屋を出て、気配までもが完璧に消えてから。
アーニャは徐にミレイを振り返る。

「…アッシュフォード。KMF開発の、先駆だった家」
「!」
「貴女は、知ってるんでしょう?マリアンヌ様を。
"閃光"と呼ばれ、強く凛々しかったあのお方を」

ミレイ・アッシュフォードは口を開こうとしない。
埒があかない、とアーニャは強硬手段に出た。

「わたしはラウンズ、第6の騎士。質問に答えなさい」

ミレイは言葉に詰まった。
下手をすれば、婚約者であるロイド・アスプルンドにまで被害が及ぶかもしれない。

「っ、Yes,my Load…」

小さく答えた彼女に頷き、アーニャはケータイの画像を1枚見せる。
それは、アッシュフォード学園での1枚。
スザクにも見せたものだ。

「これが、"ルルーシュ"?」

紙袋を被った妙な少女と共に歩く、黒髪の学生。
ミレイは頷いた。
少し考えたアーニャは、引っ掛かりを覚えたもう1枚を見せる。

「じゃあ、この方は?」

ずっと幼い、10歳くらいの少年。
服も表情も年齢も違うが、先ほどの写真の学生に驚く程よく似ている。
ミレイは目を見開いた。

「…え?」

少年の写真を見た瞬間、ドキリとした。
「いいえ…だって、ルルちゃんは…」
そこまで言って、自分が何を言っているのか分からなくなった。
「だって、ルルちゃんは貴族じゃなくて…え?でも、この庭園は、アリエスの……うっ?!」
ズキリ、と頭痛が走った。
アーニャは構わず、自分の聞きたいことだけを問うてゆく。

「エリア11に、ナナリー皇女殿下が居る。ナナリー皇女殿下の兄上は、ルルーシュ様。
どうしてナナリー様だけが戻って来たの?なぜルルーシュ様はこんな場所に居るの?」

ミレイはますます困惑するばかりだ。
頭痛が酷くなる。

「待って、妹?違うわ。ルルちゃんには弟が…妹なんて…だって、」
「?」
「…咲世子…そうだ、咲世子は私がクラブハウスに行かせた。
あの方達の世話を、って。でも、誰の…?」

ルルーシュは、ミレイよりも生活一般に強かった。
だから、わざわざメイドを使わせる必要はなかったはずだ。
彼女の様子に、さしものアーニャも眉を顰めた。

「ねえ、大丈夫?」

一体彼女は、何を言っているのだろう?
あまりに辛そうに頭を押さえるので、手を伸ばす。
ミレイは酷くなる一方の頭痛に、ぎゅっと眼を閉じた。

「マリアンヌ様…綺麗で優しかった。でも、テロで亡くなって、…?
あ、れ、?私、マリアンヌ様を知ってるのに、ナナリー様を知らない?」

ああ、誰だっけ。
一人でずっと混乱し続けるミレイに、アーニャは痺れを切らした。

「もう、いいわ。貴女には聞かない。スザクに聞く」

早々に部屋を出た彼女は、スザクが居るであろう格納庫へ急ぐ。
見つけた人物の腕を有無を言わさず引っ張り、隅っこへ連れて行く。

「ちょっ、アーニャ?」
「黙って。私の質問に答えて」
「え?うん」

アーニャの剣幕に押され、スザクは素直に頷いた。
彼女の真剣な面差しに、とても重要な話なのだろうと身構える。
目の前に突き出された写真に、絶句した。


「スザク。これは、誰?」


それはスザクの良く知る、"8年前の彼"だった。
驚愕する間に、瞬時に写真が切り替わる。

「これは?」

そちらは答えられる。
アーニャたちも来た、学園祭の時のルルーシュだ。

「ルルーシュ、だよ。ルルーシュ・ランペルージ」
「…そう」

もどかしさに、苛つきが限界に達した。

「知らないふりを、するの。"枢木"」
「!」

わざと強い語気で呼ばれた、その名字。
込められた意味はただ1つ。
『ルルーシュが日本へ送られたとき、引き取り手は枢木家だった』ということだ。
…それはスザクに限らず、ジノや居合わせたキャメロットの面々も。
誰もが初めて見る、感情を露にしたアーニャだった。
さすがラウンズと言うべきか、怒気と殺気は耐性の無い人間を射竦める。
アーニャは強い怒りに冷え込んだローズドレの眼を、隠すことなくスザクへ向けた。


「答えろ、枢木スザク。ルルーシュ様を、どうした」


敬愛したマリアンヌ様、その方のご子息を。
お優しかったルルーシュ様を、どうした。
end.

2008.6.18

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