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おそらくは使用出来ないフライング(神は死んだ。R2)
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目を見開き、絶句し、顔を伏せた。
そんな彼女の姿を見て、騎士団の幹部たちは自分たちと同じように怒りと悲しみに苛まれているのだろうと思った。

「…ああ、失望とは、このようなことを言うのですね…」

ぽつりと零された言葉を、だから彼らは『ゼロ』への諦めだと考えたのだ。
彼女はいつだって、『ゼロ』を信じていた。
その『ゼロ』の裏切りは、彼女をどれだけ苛んでいるのかと。

だが次の瞬間、微かな笑い声が聞こえたような気がしたのだ。

「神楽耶様…?」

不思議に思った扇が問いかける。
すると彼女は、肩を震わせてさらに忍び笑いを漏らした。
まさか狂ってしまわれたのか、との考えが過るが、それは彼女が顔を上げた瞬間に霧散する。

「なんて滑稽!あなた方は、わたくしの夫をブリタニアへ売ったのですか!」

ころころと、可笑しくてたまらない!と彼女は上品に笑った。
その姿に誰もが呆気に取られる。
神楽耶は声を収め、緩やかな笑みを口元に乗せた。

「わたくしが失望したのは、あなた方に、ですよ。ゼロ様ではありません」
「か、神楽耶様…?」
「だって、あなた方はよく考えもせずに、よりにもよってブリタニアの皇子の言葉を丸ごと信じたのでしょう?
ロロが居てくれて良かった。おかげでゼロ様は生きておられる」
「だが『ゼロ』の正体は!」
「ブリタニアの皇子でしたか?」
「「「?!」」」
息を呑んだ面々を、神楽耶は哀れみを込めた目で見つめた。

「藤堂、貴方は知らない振りですか?それとも忘れてしまいましたか?
まあ、今となってはどちらでも良いのですが」
「私が、彼を知っていると…?」
「どちらでも良いと申しましたわ。
わたくしには、あなた方がゼロ様を裏切ったようにしか思えないのですから」

なぜだ、と無言で問う幹部たちに、今度こそ失望した。

「では、ゼロ様が裏切ったという根拠は?」
「朝比奈が、以前の零番隊の任務内容を伝えて来た。
ブリタニアのある研究施設を襲撃し、女子供も容赦なく皆殺しにした」
「…まあ!その理由、ゼロ様にお聞きになりまして?」
「答えるわけがないだろう」
「…聞きもせずに決めつけて?ゼロ様が動くことは、必ず大きな理由が供であるというのに」
「彼は"ギアス"と呼ばれる力を使って奇跡を起こして来た!それは奇跡じゃない!」
「ぎあす?それは?」
「人にどんな命令でも下せる、悪魔の力だ!」
「まあ!では、わたくしも掛けられているのかもしれないと?」
「その通りです」
「あら、別に構いませんよ?それはつまり、ゼロ様にとってわたくしがいかに重要なのか、という証明です。
それに、わたくしは自信を持って、この言葉と思いはわたくしのものだと断言出来ますわ」

にこりと揺らがぬ笑みを浮かべた神楽耶に、誰もが信じられないと瞠目する。
それを見て取った彼女は、笑みを収め彼らを睨み据えた。


「その"ぎあす"とやら、シュナイゼルが持っていないと断言出来ますか?」


誰もが言葉に詰まる。
それはますます、神楽耶の失望を色濃くするだけだったが。

「そうやって対面したときに、ゼロ様を裏切るよう"ぎあす"を掛けられていたら?
あちらが証拠だと持って来たすべてが、偽造されたものだったら?
…本当に、失望を通り越して絶望です。
ブリタニアほどの規模を持つ皇族が、仲良しこよしだと思っているのですね。
わたくしは天皇家に生まれました。ひとりっこでしたから、平和でした。
ですがもっと昔、華族制があった頃はどうでした?
兄弟姉妹、親族で挙って遺産や跡目争い。血で血を洗う惨劇。それが貴族でした。
…ゼロ様がここを脱出されて、正解ですね。お前たちのような者が同じ志だとは、到底思えぬ」

自分の言葉に絶句している幹部を尻目に、神楽耶は部屋の出口へ向かう。

「天子様のところへ戻りますわ。天子様は、前からルルーシュ様をお慕いしておられましたから」

ギクリとした幹部たちに、神楽耶は今度こそ軽蔑の目を向けた。

「…すべてをその"ぎあす"のせいだ、と憎むのは容易い。
けれど、ゼロ様の…ルルーシュ様がなぜ『ゼロ』となったのか。
欠片も考えないあなた方は、人として如何なものでしょう?
そうして未知なる力のせいだと、自分の歩んで来た道を誰かのせいにするなんて…。
己を信じられぬ不甲斐ない者など、この戦いには必要ない!」

ダン!と鈍い音が響いた。
扉に叩き付けた拳がヒリヒリと痺れたが、構わない。


「ゼロ様が居ない騎士団など、飛び方を知らぬ鳥と同じ!
勝てないと思ったらまた、愚かにもあの方を呼び戻そうとするのでしょう?
お前たちの顔も見たくない。武士の魂など捨ててしまえ!」





振り向かず廊下へ出て幾ばくか歩いたが、誰も追い掛けては来ない。
それに気分を良くして、神楽耶は来た道を戻る。

(星刻様にお聞きしてみましょう。あの方は、ゼロ様を知っている)

(ゼロ様の無事を確認出来たら、蓬莱島へ行きましょう。
あの島に住む日本人すべてに、すべてを包み隠さず話しましょう)


『ゼロ』の居ない騎士団など、意味がないのだから。
end.

2008.8.19

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