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再利用出来ないフライング(神は死んだ。R2)
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いつかの全回線ジャックと同じく、ブリタニア皇帝の声と姿が全世界のモニターに映る。
以前と違うのは、そこに『ゼロ』の姿があることだ。
仮面の下で、ルルーシュは不可解な顔を隠さない。

「皇帝陛下。今、何と?」

彼でなくても、すべての人間が同じことを問うただろう。
それはすべての目撃者が断言するところだ。
皇帝は笑う。


「お前に我が皇位を譲ろう、と言ったのだ。『ゼロ』…いいや、
我が11番目の息子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア」


驚愕が大きかったのは、やはり『黒の騎士団』だ。
誰もが自分の目と耳を疑った。
しかし画面向こうのやり取りは、誰もの都合を無視して進んで行く。

「いったいどのような風の吹き回しで?
何よりその皇子は、すでに鬼籍に入っているはずだ」
「ほう?否定せぬあたり、腹は据わっておるようだな」
「残念ながら。飼い犬に手を噛まれそうになったもので」

揶揄の言葉は、『ゼロ』自身によって有耶無耶にされた。
その手が仮面に伸びたなら、誰もが注視せずにはいられない。

「それで、なぜ私なのですか?"父上"」

仮面の下から現れたのは、誰もが成人以下ではないかと分かる幼さを残す顔。
美しい面に皇族特有のアメジストが煌めく。
何よりも、ブリタニア皇帝を臆することなく"父"と呼んだ。
皇帝は笑みを深め、続ける。


「お前の母との約束だ。お前を止められないのなら、"世界"に繋ぎ止めてしまえと」


その言葉を聞いた途端、ルルーシュは理解した。
9年前の真相を。

(そうか。だから母上は…)

自らの命を天秤に掛け、賭けをした。
どちらにせよ、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアの負けだったのだけれど。

「我がブリタニア帝国は皇帝こそすべて。皇族こそ全て。
超合衆国連邦は民意により建てられた。しかし創ったのは『ゼロ』。
二分されたこの世界を、お前ならば統一出来よう?」

一方的な言葉に、ルルーシュは皮肉を乗せた笑みを返す。

「残念ながら、父上。私の世界はとても狭いのですよ。
そろそろ煩くなって来たので、姿を消してやろうと思っています」

だが皇帝は顔色一つ変えず、逆に楽しげだ。

「ではお前が、姿を消す供にする者は誰だ?」

ルルーシュは堪え切れず、ついに笑い声を上げた。
(なんて愉快!)
見たいのだ、この男は。
魔女が親友との約束を違えてまでも守ろうとした、"王"を。
(潮時だ。乗ってやろうじゃないか)
この狭い世界の"王"として、ルルーシュは初めて命を下す。



「集え。我が騎士たちよ」



天子と神楽耶が見上げていたモニターに、非常用回線が開いた。
『天子様、聞こえますか?』
「星刻!」
不安げだった表情に、パッと花が咲く。
しかしそれは星刻の顔を見た瞬間、すべてを悟り散ってしまった。
「…星刻、」
小さな呟きに込められた多くのものも、星刻は見なかった振りをする。

『私がお仕え出来るのは、ここまでです』

静寂に包まれたトウキョウ上空。
スザクはトリスタンが突然戦闘機モードに変形したことに驚いた。
「ジノ?!」
映像は繋がらなかったが、音声だけは聞こえた。

『あの方が"ゼロ"になる前から、私はルルーシュ様の騎士だったよ』

飛び去るトリスタンを追うように、神虎と暁が続く。
神虎に続く暁に乗っているのは、C.C.とV.V。

「あ、あの!ご主人様は皇帝なのですか?」
「いいや。ヤツは、わたしたちの『王』だよ」
「え?」
「他の人間などどうでも良いのさ。それより、しっかり掴まってろ。…逢いに行きたいだろう?」
「っ、はい!」

メインエンジン以外の電力を落とされたアヴァロンでは、しばし睨み合いが続いた。

「ロイド。これは一体、どういうつもりなのかな?」
「そりゃあもちろん、ルルーシュ様の元へ馳せ参じるに決まってるじゃないですかぁ!」

シュナイゼルの副官であるカノンが、メインコンソール前に立つロイドへ銃を向ける。
「正気ですか?」
「もっちろん!あ、ちなみに僕とマリーのどっちかが撃たれたら、そこでこの艦墜ちるから」
「ロイドさん?!」
「ざ〜んねんでしたぁ!最初っからこの艦、あの方のために設計してたんだよ。
2人居れば十分に動かせるから、権限は僕ら2人分だけ」

シュナイゼルが首を傾げた。
「マリー?誰だい?」
ころころと楽しそうな笑い声が、シュナイゼルの耳に届く。

「わたくしのことですわ」

薄暗い艦内では、はっきりと姿が見えない。
だが半分でも血を分けた兄妹、シュナイゼルは目を見開いた。
「…まさか、ユフィかい?」
短い髪を揺らして、"マリー"はくすりと笑った。

「それは死んだわたくし。今のわたくしは"マリー"です」

ルルーシュと共に生きる為に、全てを捨てて生まれ変わった。
end.

2008.8.13

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