14.5
「さんは嫌いな食べ物ってないんですか?」
「うーん、いちおうはね。ただ、料理によって違うかも」
「たとえば?」
「きのこ類は好んで手を出さないかな…」
「あっ! 私、きのこいっぱい入れちゃった」
「鍋ならえのき以外は大丈夫」
「ほんとに? あー良かったぁ」
「あっ、ノノハ! お前これ見よがしにネギ大量に入れてんじゃねえ!」
「何よー! 鍋にネギは当然でしょ!」
「大量に入れるなっつってんだ!」
「入れちゃったものは仕方ないでしょ。我慢、我慢♪」
「カイトってネギ苦手なのに、ギャモンとの早食い勝負では律儀に食べてるよな」
「……」
「意地っ張りなだけですよ、カイトは」
「そういや、お前いつも夕飯どうしてんだ?」
「ん? 高等部のカフェテリアだよ。20時まで開いてるし」
「結構遅くまで開いてたんだ…」
「事前に言っておけば、夜食とか用意しておいてくれるよ。夜勤の人用だって」
「へえ〜」
「あとさすがに毎日行ってるから、メニューはかなりアレンジしてくれてる。
たまに新作の試食も込みになってるかな」
「えっ! 何それ私も食べたい!」
「稀に変な味になってたりするけどね」
「さあ、〆はどれにする? ごはん? うどん? 蕎麦?」
「…あのなあ、どこに蕎麦があんだよ。あと飯も炊いてねえだろ」
「えっ、何で分かったの?!」
「お前の持ち込み食材仕分けたのオレだっつの」
「あっははは。バレたか」
「言ってみたかっただけ?」
「そう。ほら、こうやって聞くと豪華そうかな〜って」
「早く入れろよ、煮詰まっちまうぞ」
「りょーかい!」
「カイトってさ、やたらパズルバカって言われるけど、成績良いよねえ」
「…そう罵る筆頭が何言ってやがんだ」
「…否定はしないんだ」
「自覚はしてるからな」
「ナルホド」
「それに、オレの後見は学園長だからな。
知ってる奴なんてほとんど居ないけど、世話んなってんのは確かだし」
「…そこまで考えてたんだ。ごめん、見直したよカイト」
「ノノハに見直されてもな…」
「けどそういうこと素直に言える奴は、格好良いと思うぜ」
「……ありがと」
「学園長に聞いたけど、ソウジも称号持ってるらしいな。"ニュートン"だってさ」
「…林檎ジュースのせいか? それ」
「あー…微妙ね…。ていうか私は称号なんて要らない!」
「そう? 便利だと思うけど。そういや、カイトがパズル凄いって知ってるの、パズル部の人間だけなのか?」
「え? そんなことないと思いますけど。うちの学校、授業手法がパズル混じりだし」
「パズル部の奴らは、ちょっかい掛けてくるから嫌いじゃねえ」
「どういうこと?」
「オレがすぐ解けちまうって分かると、声すら掛けて来なくなるからな」
「あ…」
「それだけレベルが違うってことか」
「…そうなる」
「そうだったんだ…。じゃあ、もしかしてギャモン君って貴重なタイプ?」
「何であいつが出て来んだよ…」
「よし、片付けますか!」
「おう」
立ち上がり食器を下げ始めた2人に、も腰を浮かす。
「俺、何もやってないからやるけど」
「「(さん)はだめ!」」」
するとカイトとノノハの双方が同時に言ったもので、吹き出した。
「ははっ! 凄い息の合いよう」
2人は顔を見合わせるが、考えていることは同じである。
「お前呼んだのはオレたちだから、最後までもてなされてろよ」
「そうそう! 片付けなんてすぐ終わりますから!」
ならばと彼らに甘えることにして、あっと思い出す。
「カイト。貸して欲しいパズルあるんだけど…」
カイトの表情が、嬉しげにパッと輝いた。
「おっ、了解。ノノハ、こっち先やってくれ」
「OK♪」
そしてどれだ? と尋ねてきたカイトを、指差した。
「え?」
意味が分からず首を傾げた彼に、もう一度。
「カイトが持ってる、パズル」
無理にとは言わない、と言い置いて。
The wind too, fell in love. (intermission)
12.2.18
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