ギャップ萌えとは
(鬼とまで言われるリヴァイ室長が最近、みんなの腹筋と心臓を殺しにくる)
※タイトルここまで
きっかけは、今年の新入社員たちだった。
中々に優秀な彼らはイマドキの若者らしく、手のひらサイズのIT機器を使いこなしている。
休憩時間にそれを操りつつ談笑する彼らは、そのせいかなんだかやけに情報が速い。
研究開発部に配属された新入社員はアルミンという名で、当部署主任のハンジが彼に尋ねたことが切っ掛けだった。
そうして判明したのが、そう、超簡易チャットアプリのLENEである。
スタンプと呼ばれる絵を1つ貼るだけで意思疎通が出来る、なんとも素晴らしいアプリだ。
つまりはワンタッチで連絡ができる。
スバラシイ。
業務内容は決して書かないという誓約書を書いた後、それはあっという間に社内へ広がった。
面白いのは、こういったものには手を出さないと思われたハンジの部署違いの同期リヴァイが、かなり熱心に使いこなそうとしていることだ。
「いったいどうしたの? あなたがこういうものに熱心になるなんて」
幹部級の会議が終わった後、休憩ついでにハンジはリヴァイへ尋ねた。
リヴァイはまったくもって答えたくないと顔に書いていたが、ハンジの眼光は聞くまで動くものかというレベル。
結局、リヴァイは根負けした。
「…仕方ねえだろ。エレンがこれなら楽だって言ってんだから」
「え?」
思わず聞き返したのは不可抗力だ、絶対。
「エレンって、あなたんとこの新人君だよね?」
「他に誰がいる?」
「だよねえ…?」
んん? どういうことだ??
何がどうエレンとイコールになるのか、ハンジにはさっぱり分からない。
リヴァイはバツが悪そうに目を逸らした。
「…前に、あいつがでけぇミスしたことあったろ」
「ああ、あれ?」
全社を上げて対応して、奇跡的に他に対する影響なく収められた事件だ。
「ていうか、あれエレンのせいじゃないよね?」
「…ああ」
むしろ彼は会社に感謝されるべきだ、というのが代表取締役のピクシスを含めた幹部たち満場一致の意見である。
今までなぜそのオペレーションが出なかったのか、またなぜ誰一人として気づけなかったのか。
しかも、もしそのときエレンが出さなければ驚くほどの社会的、金銭的損害が出ていたことが判っている。
「それでもミスはミスだ。始めはそこまで判明しちゃいなかったしな」
「で、叱ったわけだ」
「ああ」
間違ってはいない。
上司の役目は、部下を育てること。
失敗のフォローはもちろん、同じ轍を踏まぬよう叱ることも大切だ。
「怒ると叱るは違うけど、あなたは間違えないでしょ? まあ程度ってもんがあるけど」
「まあな…」
エレンは猪突猛進で思い込んでしまうと一直線なきらいはあるが、注意されたことはきちんと理解するし飲み込みも早い。
座学に強いというわけではないが、彼の中の『正義』を叩きさえしなければこれほど育て甲斐のある人間もいない。
リヴァイは本気でそう思っている。
「まだエレンがあなたの班を離れたがってるとか、会社を辞めたがってるって話も訊いてないけど…」
それに、後でエレンにその件を謝ったとも聞いている。
だというのにこの同期は、何をそこまで落ち込んでいるのか。
ハンジはからかう気も起きず、逆に心配になってきた。
「話逸れたけど、LENEの話だよね?」
「ああ」
「あんたがLENE始めたのは、エレンがやっているからなんだよね?」
「…ああ」
「エレンがやってるからって、あなたがやり始めるとも思えないなあ。切っ掛けは?」
「…だから、エレンがそれなら楽だと」
「そりゃ、ちょっとした連絡にはすんごい楽なツールだよ?
でもあの子、アルミンもだけどさ。仕事にそういう効率の良さは求めないんじゃない?」
饒舌だったリヴァイの舌が、ここでようやくぐっと詰まった。
ハンジは何の言葉も返さず、じっと彼の言葉を待つ。
いつもは五月蠅いくらいに喋る彼女が何も話さないことにじわじわと焦りが生まれ、リヴァイはついに自ら口を開いた。
「…エレンが、目を合わせてくれねえんだ」
分かるだろうか。
これを聞かされたハンジの心境が。
「……は、…え?」
ハンジが驚くほど戸惑う様子に気づかず、リヴァイはバツが悪いのか矢継ぎ早に続けた。
「仕事の要件以外で目を合わせてくれねえ」
「…へ」
「こっちから話しかけると、明らかに怯えやがる」
「…は」
「エルドたちとは普通に話してるし笑いかけもするってのに…」
「………ぶっ」
我慢の限界だった。
「あーっはっはっはっはっはっ!!! いーひっひっひっひっ!!
…ひーひー…なにそれなにそれ! あなた落ち込んでるの? そうなの?!!!」
「そうだよ悪ぃか?!!」
「悪くないけどちょー受けるっっっっっ!!!!」
腹筋ヤバイ腹筋死ぬ! とハンジは腹を抱えて笑いまくる。
ここが防音の会議室で良かったと胸を撫で下ろしつつ、リヴァイは笑われる羞恥に耐えた。
「うっふふふ…それでLENE始めたんだ? ペトラたちも巻き込んで?」
「…そうだよ」
「あっはははは! そりゃ、あなたから言うわけないもんね!
君の優秀な部下たちが、エレンの好きそうなこと調べてくれたんだねえ」
「…チッ」
ちゃんとお礼は言ったのかい? と聞けば、当然だと返った。
その辺り、真面目でマメな男だ。
笑いを収めたハンジは、気を取り直してもう一度問う。
「それで、LENE始めてどうなの?」
すると無言で彼の社給スマホを渡され、ハンジは遠慮なく開いているLENEの画面を覗き込んだ。
ペトラ:今やってる企画、そろそろ一段落ですね!
エルド:(ビールに顔が描いてあるスタンプ)
グンタ:合同の新入社員歓迎会以来だな。エレンは酒強いか?
エレン:えと、はい。程々なら…。
オルオ:潰れたりするんじゃねえぞ、新人!
ペトラ:黙れオルオ。
ペトラ:どうですか室長。打ち上げの予定は!(目をキラキラさせた鶏のスタンプ)
リヴァイ:そうだな。そろそろ計画立てるか。
ペトラ:(飛び跳ねる猫のスタンプ)
オルオ:(サムズアップする犬のスタンプ)
エルド:幹事はオルオがやりますんで!(酔っ払った顔のビールのスタンプ)
グンタ:日付はおいおい決めましょう。
エレン:分かりました。
「うーん…」
ハンジは首を捻る。
「真面目だね…?」
いやまあ、職場のグループLENEだから仕方ないと言えなくもないけども。
「大体いつもこんな感じ?」
「ああ」
「うーん…。私、アルミンとエレンのLENE見せてもらったことあるけど、もっとポップな感じだったなあ」
スタンプ結構使ってたし、と告げれば、溜息に近い呟きが返る。
「だよな…」
「ちょっ、なに、私追い打ち? 追い打ち掛けちゃった??」
だめだマジ腹筋死ぬ! と笑い転げながら、ハンジはひとつ提案した。
「じゃあさ、リヴァイがちょっと頑張ってみれば良いよ!」
「あ?」
* * *
エレンが所属する部署は少数精鋭であり、ゆえに他とは違う習慣がある。
たとえば休憩。
2時間経つ毎に10分の休憩が必ず入る。
先輩方いわく、本当は1時間経つ毎に10分入れたかったのだという。
「他の部署の人が見ると、サボってるように見えるらしいわ」
うちの成果を見て言えってのよ!
ペトラがぷりぷりと怒りつつ言うことには、そういうことらしい。
短期集中タイプのエレンにはどちらにせよ有り難い話なので、休憩は有難く頂く。
15時の休憩は皆でお茶菓子を摘まむが、それ以外は各自で少しずつ時間をずらして休憩する。
休憩に入ったエレンは、まず自分のスマホを操作した。
同期のグループLENEに、他愛のない会話が並んでいる。
適度に既読スルーしつつ、今度の休みに皆で水族館へ行こうと言っているので文字を入力。
エレン:水族館、朝イチで行きたい!!(猫を集めるアプリの、花を飛ばしている猫のスタンプ)
何人かが即座に返信を寄越してきた。
ジャン:水族館でテンション上がるとか女子かよwww(LENE公式の見下した顔の兎のスタンプ)
ミカサ:エレンが言うなら、開店と同時に入ろう。(「ハイ決定!」と書かれたフクロウのスタンプ)
アルミン:朝の方が涼しいし空いてるから、良いかもね。
(ジャンは後でシメる)
エレンは個人スマホを仕舞い、社給のスマホを手に取った。
(あ、何か来てんな)
この部署のグループLENEに通知がある。
早速開いてみたが、エレンはビシリと固まった。
リヴァイ:打ち上げだが、来週の金曜なら全員の予定が合うだろう。(閃きマークのしなもんロールのスタンプ)
(えっ)
思わず画面を二度見してしまった。
(し、しなもんロール???)
林檎3個分の体重の猫のキャラクターを要する某社の、白くて耳が長い別のキャラクターだ。
そう、それは分かっているのだが。
(えっ)
エレンは発信主を見る。
彼は自分たちと向き合うようにデスクが配置されているが、デスクトップ画面に向かって仕事中だ。
もう一度LENEを見る。
(……いやいやいやいや)
あの室長が?
怒るとヤーさんも真っ白なレベルで恐ろしい(パワハラの問題があるので手足は出ないが)、あのリヴァイ室長が?
(しなもんロールのスタンプ…?)
いやいや、間違いだろう、きっとそうだ。
エレンはぶんぶんと頭を振り、先輩たちに怪しまれながらも仕事に戻った。
ちなみに彼の後に休憩に入った先輩方も、順繰りに同じ反応を示したことをここに記しておく。
「エレ…っ、エレン! エレンちょっと来て!!!」
「わあっ?!」
昼休みになった瞬間にペトラに腕を掴まれ拉致されて、エレンは辛うじていつも身に着けている財布に感謝した。
スマホも2台、ちゃんと上着のポケットに入っている。
ちょうど来たエレベーターに乗り込み、掴まれたままの手首が少々痛いが離してくれる気はないらしい。
1階へ着くと同時に開店ダッシュか! という勢いでペトラが競歩並みのスピードで歩き出す。
「に、逃げませんから離して下さい!」
足が縺れそうになったエレンが涙目で進言すれば、ようやく彼女は落ち着いた。
「あっ、ご、ごめんねエレン!」
ともかく、ちょっとランチに付き合ってね! と言われて、もはやそれ以外に選択肢が見えないので素直に頷く。
そうして連れて来られたのは、女性に人気であろうことが一目で分かるカフェだった。
お絞りとグラスの水で一息つき、エレンは恐る恐る先輩へ尋ねる。
「あの、ペトラさん。なんで俺を拉致ったんですか?」
ペトラはやや不自然な間を置くと、徐ろに社給スマホを取り出した。
「…見たよね?」
「………室長の、ですか?」
「そう!」
ばん! とテーブルを叩いた勢いで身を乗り出され、エレンは仰け反る。
「なんなのよ、アレ! 間違いなの? わざとなの??」
うーあー気になるぅ! とペトラが荒ぶっている。
運良く…店員にとっては運悪く…頼んだ食事が来たので、彼女は通常モードに戻った。
(器用だな…)
頼んだピザセットを2人で摘みながら、エレンはエレンで考える。
(確かに、気になる)
もぐもぐやっていると、テーブルの隅に置いていたペトラの社給スマホが通知のバイブを鳴らした。
指先を拭い、彼女は画面ロックを解除。
「〜〜〜?!」
そして撃沈した。
「ぺ、ペトラさん?!」
撃沈しながらも、ペトラはまるでダイイングメッセージのようにエレンを指差す。
「れ、LENE…」
ガクリ。
うっかり「ペトラさぁああん!」と叫びたくなるところを賢明にも黙したエレンは、自分も社給スマホを取り出した。
やはりグループの通知が来ている。
エルド:じゃあ来週の金曜で決まりっすね!(酔っ払った顔のビールのスタンプ)
オルオ:了解です!(「参加します!」と書かれた、片手を上げた犬のスタンプ)
リヴァイ:おい、エレン。お前食いたいもんはあるか?(ジュースを持ったモチャッコのスタンプ)
「@#$%&*?!」
驚きすぎて言葉にならなかった。
(も、モチャッコだと…!)
しなもんロールに続いて、同じ会社のお絵かき風の犬のスタンプである。
一足早く撃沈したがゆえにエレンより一足早く復活したペトラが、呆然とスマホを持つエレンの手をがっしと掴んだ。
「エレン!」
「ひっ?!」
こわい、ペトラさんめっちゃこわい。
思いきり肩を揺らしてしまったエレンに構わず、ペトラは心なしか頬を紅潮させてこう言った。
「エレン、次はあなたが信じる番よ!」
「はあ?」
先輩に対して些か無礼な返しであろうが、彼女は気にしなかった。
どころか力説してくる。
「いい? エレン。これはリヴァイ室長からのメッセージよ」
いや、見た通りですけど。
エレンはなんとか口をつぐんだ。
「ここだけ。ここだけの話よ?」
ペトラが声量を抑え、実は…と暴露を始めた。
「変だと思わなかった? LENEでグループ作る、なんて室長が言い出したの」
確かに、それは思った。
それに対して、エレンは「楽で良いですね」と言ったのも覚えている。
くすり、とペトラが笑った。
「あのね。室長がLENEやるって言い出したの、エレンと仲良くなりたいからなのよ?」
エレンはぽろりとピザを落とした。
皿の上だったのは幸いと言うべきか。
「…は? え? どういうことですか?」
ペトラは先程までの取り乱しっぷりはどこへ置いたか、良き先輩しての顔を取り戻している。
「うちの部署、寄せ集めで作られてるのは知ってるよね?」
「はい。エルヴィン統括部長が、リヴァイ室長が動きやすいように権限を与えた、とは」
「そう。それで私とエルドとグンタ、オルオが有り難くもメンバーに指名を頂いて、今のこの部署になった」
「はい」
それがなんだ? と表情に描いているエレンが、ペトラは可愛くて仕方がない。
「今年で4年目なの。私たちは新しいメンバーを迎えるのも、新人を迎えるのも初めて」
「えっ?」
「もちろん、『先輩』なんて呼ばれるのも初めてよ」
驚きを表すように、エレンの深緑色の眼がくるくると光を変える。
「室長も同じ。あの人、中途入社の教育はしているけど、新人の教育は初めてなのよ」
「へえ…」
はて、それが今までの話とどう繋がるのか?
未だ分からぬエレンに、彼女はグループLENEでひとつメッセージを送る。
ペトラ:エレンの好物をリサーチして、ポイントアップですね!(うふふ、と笑う氷の女王様のスタンプ)
ポイント? とエレンが疑問に思っていると、即座に返信があった。
リヴァイ:…ペトラよ。一番ポイントの高いお前が俺からポイントを奪うんじゃねえよ。(しょんぼりしたしなもんロールのスタンプ)
なんだこの人、女子かよ。
エレンは思わず目を覆った。
「…あの、ペトラさん。この"ポイント"ってなんですか?」
「エレンにお礼を言われたら5ポイント、笑顔を向けてもらえたら2ポイント」
「うちの部署で…?」
「ハンジ室長の研究開発部と、エルヴィン統括部長の総務部も入ってるよ」
エレンは堪えきれずにテーブルへ突っ伏した。
(…アルミンも後でシメる)
絶対に知ってる、知っていて黙っているに決まってる。
「な、なんでたかが俺1人にそんな大事になってるんです…?」
恥ずかしい。
恥ずかしすぎて暑い。
「エルヴィン統括部長の話だと、自分やハンジ主任に相談に来るくらいに誰かを気に掛ける、ってことがないらしかったわ。リヴァイ室長」
エレンをうちに配属させるのも、今年の新人の振り分けで第一声を挙げたらしいし。
(ますます恥ずかしい…)
とんだ羞恥プレイだ。
「…嫌われてるわけじゃない、っていうのは、あの一件で分かりましたけど」
「けど?」
「そこまで気ぃ使われてたんですか? 俺」
全然気づいてなかった…申し訳ねえ…、と項垂れる彼を、ペトラは宥めた。
「やあね、エレンは気づかなくたって良いのよ。私たちが勝手にエレンを可愛がってるだけなんだから」
「かわ…っ?!」
顔を真っ赤にして目を白黒させるエレンは、ペトラの目には可愛い以外の何者でもない。
今ならいけるんじゃないか、とダメ押しを行う。
「だから、ね? エレン。仕事は仕事、プライベートまで干渉したりしないわ。
でも仕事の範囲なら、同じでもやっぱり楽しい方が良いじゃない」
「…そりゃ、まあ」
「うちの飲み会とエレンたち同期の飲み会が重なっても、同期の友だちを優先して良いのよ?
室長がちょっと落ち込むだけだから」
えっ、あの人落ち込むの?
やっぱり顔にそう書いているエレンは、若干正直すぎるかもしれないが。
もうひと押し、とペトラはとっておきを暴露する。
「それにリヴァイ室長、ポイントがぶっちぎりで最下位なの。慰めると思って」
まあそうですよね、とエレンはすっかり冷めてしまったピザを口に放り込んだ。
エレン:あの、俺…チーズハンバーグが食いたいです…(壁から顔を右半分だけ出してこちらを見ている黒猫のスタンプ)
「〜〜〜〜!!」
スマホを取り出したと思ったらそれを握り締めて固まったリヴァイに、ミーティング相手のエルヴィンは目を丸くした。
「リヴァイ?」
「……が、」
「?」
「エレンが、俺を萌え殺そうとしてくる…」
いちいちクソ可愛いな畜生!
ダンッ! と机が拳で叩かれたが、どうやら無事なようだ。
まあ落ち着け、とエルヴィンは誰かのようにリヴァイを宥めた。
「ハンジからLENEの使い方について相談を受けたと話には聞いていたが、上手くいっているようじゃないか」
「ああ…。初めてエレンがスタンプで返してくれた」
見ろ、と差し出されたスマホには、リヴァイを室長とする部署のグループLENEが表示されている。
知らずエルヴィンも相好を崩した。
「やあ、可愛らしいな。エレン本人みたいじゃないか」
チーズハンバーグが食べたい、という黒猫のスタンプは、まるで今のエレンの距離を表しているようだ。
「まあ、前進したようでなによりだ」
リヴァイ:分かった。お前、ビールは飲むのか?(GOODと書かれた看板を持ったマイルーのスタンプ)
デザートに出てきたシャーベットを放り込んだ口を、ペトラは咄嗟に塞いだ。
(なんで「GOOD」? エレンが答えてくれたから? しかもマイルー!)
可愛いというかなんだこれ、ギャップ萌えか!
正面のエレンを見ると、彼はスマホ画面を見ながらスプーンをくわえて口をもにょもにょさせている。
(笑い出さないように頑張ってるんだなあ)
もはや、微笑ましい以外の何者でもなかった。
エレン:飲めます、けど。最近はハイボールとか好きです(顔の下半分がブロックに隠れている黒猫のスタンプ)
今度は片手で顔を覆ったリヴァイに、エルヴィンは少し遠い目をする。
(これは…重症だな)
エレン、君はすごいよ。
(これで、調子に乗ったリヴァイが構いすぎなければ良いが…)
とりあえずは見守ることにしたエルヴィンである。
「リヴァイ、そろそろ話を進めたいのだが?」
「あ、ああ…すまない」
リヴァイ:…だ、そうだ。オルオ、いけるな?(何かを叫んでいるミィメロディのスタンプ)
またダン! とペトラがテーブルを叩いた。
「だから! なんでそのチョイス?!!!」
もうやだなにこの上司かわいすぎか!!!!
荒ぶる先輩に、エレンは心の中でテーブルに「ごめんね」と謝っておく。
オルオ:了解しましたっ!!(ぬんっ! と眉間に力を入れている犬のスタンプ)
エルド:幹事は責任重大だな〜(手足の生えたビールが万歳しているスタンプ)
グンタ:がんばれ!
ペトラ:オルオ、変なとこ選んだら…分かってるわよね?(得体の知れない土釜に何かを入れようとしている魔女のスタンプ)
(ペトラさん…またオルオさんに酷いな…)
エレン:よ、よろしくお願いします。(目をキラキラさせている、猫を集めるアプリのスタンプ)
期待されたら、応えねばなるまい。
(よし、ぐるめパァンナビで…!)
(…室長って、実は可愛い物好きなのか?)
(エレンは猫好きかあ)
(スクリーンショット残しとこ)
当日の飲み会がどうなったのか、それはまた別の話だ。
--- ギャップ萌えとは end.
2015.7.20
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