続・【平安刀】元監査官に関する

面白い事象を報告する【ガード】


(8.鶯の鳴くことには・裏)




「…なあ、切国。ここまで聞いたお前なら、もう解るだろう?」
鶯丸は穏やかに続ける。
この本丸の審神者は、確かに刀剣男士みなを大事にしている。
初期刀、初鍛刀、初ドロップ、そして最推しは別としても、それでも皆に平等であろうと、皆が過ごしやすいようにと努力している。
ーーそれでも、審神者は人の子なのだ。
国広は数秒躊躇ってから、練りきりに手を伸ばした。

「俺は…本歌が配属にならなければ、極めることも練度がここまで上がることもなかった」

不自由はなかったが、国広は審神者にあまり興味を持たれていなかったと自覚している。
実際、長義が来るまで練度は50そこそこだったし、修行も先に鳴狐が出るはずだった。
「主が山姥切に興味を持ったから、お前にもそれが向いた。だが不都合なのはここからだな」
「…ああ」
極は練度を上げるのに非常に時間が掛かる。
打撃と機動が格段に上がり即戦力となる極の短刀と違って、打刀は極めると長いこと機動も追いつかない。
「…本歌が俺を意識しなくなれば、主も俺を見なくなる」
国広の他に、打刀の極は幾振りも居る。
優先されるのは彼らの方だ。
「俺と大包平も、練度が30になってから遠征にしか組み込まれていない。俺たちのような爺は暇で構わんが、そうでない者も居る」
遡行軍を倒すために顕現されたのだから、誰もが出陣し敵を斬りたい。
だが出陣枠には限りがあり、おのずと優先される刀が決まってくる。
「同じ人の形を使って向き合うと、人の子とは難儀なものだなあ」
今、審神者の興味は長義へ向いている。
ゆえに彼の腐れ縁だという南泉一文字も、同じ部隊に組み込まれるようになった。
彼の師匠筋である日向もそうだし、所蔵元が同じ物吉貞宗もそうだ。
「極めたところで、主の優先順位は何も変わらないし、人の子はすぐに飽きる」
「……よく、知ってる」
国広には極めてからのここからこそ、地獄かもしれなかった。
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2019.4.25
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