無垢なるもの

2.




薄暗い部屋の中。
覗き込んだ瑠璃色に、白山は己の色を視る。

「わたくしの眼は、あなたの色を写しました。わたくしの髪は、あなたの色をなぞりました」

この狐も同じ。
白山が初めて見た色を、美しいと感じた色を、そのまま載せた。
彼の色ほど、深い色合いは出なかったけれど。
「わたくしは、あなたの鏡でありたかった」
白山の求めに応じて座っている長義の目を、白山はじっと覗き込む。
その姿に、ようやく思い当たったものがあった。

「…お前は、もしかして『俺』の後輩だった白山かな?」

まったく同じフレーズを、聞いたことがあった。
相変わらず至近距離でこちらを覗き込みながら、白山ははい、とあっさりと肯定する。
「わたくしたちは、本丸への配属にあたり、政府へ条件を出しました」
「条件?」
「はい。わたくしにとってのあなたのように、白山吉光の教育係、山姥切長義の元へ顕現させるように、と」
そうでない個体も居るだろうに、とは思う。
だが実際に彼の教育係であった長義からすれば、可愛い後輩がそうまでして会いに来てくれたのだ。
嬉しくないわけがない。
「ありがとう。嬉しいよ、白山」
彼の頬に両手を添え長義が微笑めば、白山の表情が薄っすらと和らいだ。
「はい。わたくしは、幸福な個体です」
白山はそっと長義へ手を伸ばし、抱きついた。
そうすれば彼の手が己の背を、頭(こうべ)を撫でてくれると、疑わない仕草だった。

その感情の色が真白なのか、判断出来る者は居ない。

















<おまけ>

実は扉、開いてるんですよ。
今日はこの部屋で寝泊まりするよ、って連れて来ただけだからね。

「うん。やはり白山は、山姥切殿にお願いした方が良さそうだね」
「え、同室って今日だけじゃないの? ていうかこれって…」
「…やっぱり山姥切さん、口説かれてます?」
「俺は親子みたいなもんだと思うけどなあ」
End.


2019.2.21
ー 閉じる ー