ひかりとやみは、ふたつでひとつ。
どちらがかけてもせかいはほろび、どちらがまさってもせかいはほろぶ。
(どちらかが勝れば、暴走する)
大地のデジコードがまた1つ、本来の位置から取り外されて格納された。
それをただじっと見つめる。
(いったい、ボクたちの世界に何が起きた?)
突然にデジコードが飛び散り、昼と夜が狂い、大地が割れた。
デジタルワールド(以下DW)のすべてのデジモンたちが逃げ惑い、世界の枢たるデジモンでさえ身を守るしかなかった。
光と闇が爆発し、世界は一瞬で混沌と化した。
(このボクが居る、DWが!)
光と闇をその身に司った彼は、DWの化身だった。
名を、ルーチェモンという。
かつて十闘士のスピリットを受け継いだ人間の子供たちと戦い、身の内の光と闇が調和し、正常な姿と力で蘇った。
ビーストとヒューマン。
光と闇。
起こるべくして起こる争いを彼は鎮め、そしてDWは穏やかになった。
彼自身もまた、DWで生きることが楽しかった。
だというのに。
それが突然、ばらばらになった。
(なぜボクが、身を守ることしか出来ない?)
ルーチェモンも咄嗟に己の身を守った。
核(コア)に閉じ篭り、さらなる防壁で覆って。
しかしじわじわと、『外』からの侵蝕が始まった。
世界を支配出来る力を以てしても、暗く淀んだ『何か』の侵蝕を止められない。
(デジモンの声が聞こえてくる。ボクに呼び掛ける声が)
背に輝く純白の翼は、2枚が真っ黒に染まっていた。
白い翼は残り、6枚。
すべてが黒に侵されてしまえば、自分はまた…
(DWを破壊するんだろう)
声は言う。
我らに力を、我らに世界を、我らに支配を、我らにすべてを。
「ルーチェモン様。そこからお出ましになり、我らに力をお貸しください」
「バラバラに砕けたDWを、救う為に」
「かつて混沌であった世界に秩序を与えた、あなた様ならば」
DWがおかしくなったのは、この聞こえてくる声の所為ではない。
何か、誰もの想像を超えたことが発生し、こうなったのだ。
それは分かっている。
だから、自分の力ではどうにもならない。
侵蝕してくる『闇』に、ただ抵抗するのみ。
(ボクの中で光と闇がバランスを崩せば、ボクは暴走する)
さりとて、時間の問題だ。
本来が闇と光を拒まぬ性質、誰かの助力なくして均衡を保つことは難しい。
過去は、そして今までは、十闘士がその役目を負っていた。
だが彼らはここに『居ない』のだ。
同じDWであるのに、彼らの存在を感知出来るのに、『そこに居ない』。
(…頼むから、気づいて)
もう、呼ぶしか無かった。
DWと表裏を成す、人間界から。
人間でありながらデジモンと心を通わせ、ルーチェモンという存在をあるべき姿に戻した『彼ら』を。
世界ヨ、我ヲ救エ
end. (2010.8.22)
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