ここにはかつて、天使と悪魔が住んでいました。
その世界は、天使と悪魔の争いで一度壊れてしまいました。
1つにまとまっていた天使はバラバラに。
1つにまとまっていた悪魔はバラバラに。
天使と悪魔は見た目が違うだけなのに。
それだけの違いなのに、争いを起こした。
挙げ句の果てに、世界を滅ぼすところだった。
では何故、ここに今、世界があるのでしょう?
それは簡単。
世界が身を守るために、天使でも悪魔でもない存在を生み出したから。
天使は白い鳥のような翼を。
悪魔は黒い蝙蝠のような翼を。
世界が生み出した存在は、黒い鳥のような翼を。
その存在の証は、黒い蝶のシルシ。
でも誰もその姿を見たことはありません。
なぜなら、見た者はすぐに死んでしまったから。
その存在は世界を守るために、天使と悪魔を消していった。
では何故、ここに今、天使と悪魔が住んでいるのでしょう?
答えは簡単。
その存在が姿を消して、何千何万という時が過ぎたから。
では何故、この書は残っているのでしょう?
それは否。
残っているのではなく、今、書かれようとしているから。
ある天使の国が争いで滅びようとしている。
ある悪魔の国も争いで滅びようとしている。
ある天使の国に、悪魔が逃げ延びた。
ある悪魔の国へ、天使が逃げ延びた。
ある場所で、天使と悪魔が平和に暮らしている。
ある場所で、誰も知らぬ存在が世界を見下ろしている。
世界は再び危機に堕ちた。
"わたし"という存在は、それを記すことを使命とする。