「雪……?」

ひやりとした風に、シンは伏せていた顔を上げた。
…ちらちらと白い粒が降ってくる。

プラントの天候は、人工。
今の季節設定は、冬。
シンは冬物には少し薄いだろう服を着ていた。

でも寒さはもう感じない。

今いる場所は、どこかの簡素な煉瓦作りの住宅街。
そこにある空き家らしい家の、軒下。





-紅玉のイノチと青玉のアカリ・前編-






プラントに来てから、約一週間が経った。
(これからどうしようか…)
最近になって、ようやくそう思い始めた。

家族が死に、身元を確認出来るものも何も持っていない。
シンが持っているのはこの"自分自身"と、オーブ政府が今際に支給したわずかな資金。
…コーディネイターだったからここへ来た。
けれど、目的も何もない。
(…眠い……)
降り続ける雪に興味もなく、シンは膝を寄せて顔を埋めた。

雪は静かに白を広げる。





車の止まる音と、よく分からないおかしな機械音。
それと誰か女の子の声。
シンは沈みかけていた意識を呼び戻された。
…軽い足音が近づいてくる。

「ねえ、こんなとこにいたら風邪引くわ。
今日の温度設定はかなり低いから、コーディネイターでも危ないわよ?」

他に誰もいないので自分に話しかけてきているのは分かる。
物好きだな、と思いつつシンはほんの少し顔を上げ、目だけでその人物を見上げた。
…ひどく場違いに見えるピンク色。
そんな髪の毛をしていて、じっとシンを見ているその少女。
さらに向こう、少女の向こうの視界を赤い物体が行き交うのが見える。
少女がふっと声色を変えた。

「ねえ、ひょっとして…そのまま死にたいの?アナタ」

"死"という言葉に反応し、シンは顔を上げて少女を見た。
するとその少女は何か驚いたようにハッとする。
そしてぱんっ、と楽しげに両手を合わせた。

「わあ…すっごく綺麗!レイと同じくらい綺麗かもvv」

「…?」
シンはわずかに眉を寄せた。
しかし構わず、その少女はシンのすぐ傍にしゃがみ込む。
「ねえ、アナタ。家は?家族はいないの?」
「……」
答えないシンに少女はにこりと笑った。

「じゃあ私たちの家に来ない?」

シンはあからさまに不審そうな顔をした。
…自分はまだ子供とはいえ、普通そんなことを言うか?
同じコーディネイターでもシンのように何も答えないなら、少なからず不審に思うだろう。
けれど目の前の少女は、微笑んだ表情を崩さない。
「ね、だって帰る場所がないんでしょう?私も似たようなものだったし…。
それにね?アナタ綺麗だから、変な場所に連れて行かれちゃうわ」
「……」
相変わらず答えないシンにため息をつくと、その少女は笑みの種類を変えた。
何か別の、含みのあるような笑みを。

「嫌だって言っても連れてくわ。私、一度気になったらしつこいのよね 」

よく見るとその少女の乗ってきた車の傍には、護衛らしい男が2人いる。
車も一般民のシンですら高級車だと分かるもの。
…無理矢理にでも連れて行く、と。
シンはしばらく少女を見上げていたが、行くところがないのは本当なので立ち上がった。
少女は嬉しそうに笑うとシンの手を取る。

「私、ミーアって言うの。ミーア・キャンベル。アナタは?」
「……」

シンはやはり答えようとしなかったが、ミーアは特に気を悪くした様子もない。
じゃあ後で教えてね?とシンの手を引いて歩き出した。























ミーア・キャンベルの誘拐講座☆(←シャレにならんからヤメロ)
『レイとミーアは絶対に顔見知りだ!』という、氷海の妙な思い込みから始まりました。
題名はアウシンの「ヒカリカガヤキ」に則って。

2005.1.4


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