アークエンジェル級第二番艦ドミニオン…全ての造りがアークエンジェルとほぼ同じ戦艦。
ナタルはその格納庫で新たな戦力となるMSパイロット達と面会した。
-『コーディネイター』であること-
「バジルール艦長、ご紹介します。ビクトリアを落としたMSとそのパイロットです」
ムルタ・アズラエルはそう言ってパイロットの三人を呼び寄せた。
正直言ってナタルはその三人にあまり好印象を持てなかった。
リーダー格らしいが口の悪いオルガ・サブナック。
どうもその彼に突っかかっていくタイプのクロト・ブエル。
そしてやる気がまったくなさそうなシャニ・アンドラス。
三人が三人とも好き勝手にしているらしく、上司もなにもあったもんじゃないと聞いた。
・・・これでは好感を持てという方が無理だろう。
彼らとのあいさつもそこそこに(ますます嫌われることは分かり切っていたが)ナタルはアズラエルに向き直った。
「四機来ると伺いましたが…?」
アズラエルはそうでした、と搬入口を見やる。
「もうすぐ来るはずですよ。ああ、あれですね」
真っ白な機体が吸い込まれるようにして入ってきた。
今までのMSにはないデザインは天使のような雰囲気を与える。
それと共に迫力と存在感も大きい。
・・・一体どこで造られた機体なのか?そしてパイロットは…?
ワイヤーをつたって降りてきたパイロット。
その人物がヘルメットを外したとき、ナタルはあっと声を上げてしまった。
「キラ・ヤマト少尉?!」
対して名前を呼ばれた少年もまたえっ?と声を上げる。
「ナタルさん?!」
ナタルは驚愕した。
・・・一体、何故彼がここにいるのか…?
一方の三人組の方はナタルとは別の意味で驚いているようだ。
「おや、顔見知りだったんですか」
アズラエルは少し驚いた様子で彼を手招きする。
その少年はナタル達に軽く会釈した。
「フリーダムガンダムのパイロット、キラ・ヤマトです。よろしく」
キラは笑顔を浮かべて簡潔に挨拶をする。
すると今まで口を開かなかったクロトがキラをじっと見つめて言った。
「あれ?お前女じゃなかったのか」
見ればオルガとシャニも同じような疑問を持った顔をしている。
「…僕は男です」
キラはムッとして言い返した。
・・・間違えられて良い思いをしたことは一度だってない。
ちょうどその時、整備員の一人から声がかかった。
質問責めにされそうになったキラは救いとばかりに早々と話の腰を折る。
「整備に回ってもいいですか?向こうで手こずってるみたいですし…」
アズラエルは少し考える素振りを見せたがすぐに許可を出した。
「いいでしょう、バジルール艦長のことはもうご存じのようだし。整備の方、頼みますよ」
「はい。あ、カラミティ・フォビドゥン・レイダーの整備も僕が受け持つのでよろしく」
三人にそう告げると、キラは更衣室へと走っていった。
キラが走り去るのを黙ってみていた彼らだが、まずオルガが口火を切った。
「おい、アズラエル。あんな奴が整備で大丈夫なのか?」
そしてキラが男ということに少しがっかりしたらしいクロトはちらりとナタルを見て呟いた。
「ほんっと女っ気ねーんだな、この艦」
事実、女性の乗組員は数えるほどしかいない。
黙ってキラを見送っていたナタルはというと、またも三人に対する好印象を減らした。
・・・よりにもよって上司を呼び捨てにするなど言語道断。
しかし彼女の中ではそれよりもキラのことが大きかった。
・・・何故彼が…
「ア、アズラエル理事。何故彼がここに…?」
冷静沈着、軍人の鏡とまでも言われるナタルの驚きように何事かと周りの整備士達も振り返る。
アズラエルは不敵な笑みを浮かべた。
「ああ、何故私がコーディネイターである彼を引き入れたかが疑問なんですか?」
「「「コーディネイター?」」」
足並みが揃ったことがないオルガ達の声が揃った。
「へえ、だからあんなに綺麗な顔してんのか?」
彼らもまた他の兵士達と同じく、コーディネイターを直接見たことはなかったらしい。
しかしナタルの問いの答えはまだ返ってきていない。
彼、ムルタ・アズラエルはコーディネイター排除を掲げる団体、ブルーコスモスの盟主だ。
アークエンジェルがアラスカに着いたときもコーディネイターであるキラの処遇についてかなり揉めたらしい。
自分がアークエンジェルを降りた後もまた一悶着あったとも聞いている。
・・・一体どうして…
「それは彼本人に聞いた方が良いと思いますよ。その方が正確ですし」
アズラエルは整備士達と話すキラを横目で見やると格納庫から出ていった。
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