Sympathizer01... はじまりの帰還

CB(ソレスタルビーイング)の新たな母艦。
まずざわめきが広がったのは、格納庫だった。

「シン!その話、本当か?!」
「嘘付いてどうすんだよ!」

最初に話を聞いたのはラッセだった。
彼の声に、何事かと他の面々が集まってくる。

「どうしたの?調整中に何かあった?」

同じく機体の調整を終えたアレルヤが尋ねる。
問われたシンは首を横に振った。
「違う。…あ、それも違うか。調整自体が間違ってるから」
「は?」
ガンダム建造に関する責任者であるイアンが、慌てて駆けて来た。
「おいおいシン!そりゃないだろ!さっきのテスト結果もばっちりだったってのに…」
シンは苦笑する。

「そういう意味じゃないって。なあ、ティエリアは?」
「ん?ああ、次はセラヴィーのテストだから、そろそろ…」

ラッセが答えたところへ、ティエリアが姿を見せた。
「何をしている?テストは終わったのか?」
そういえば、ラッセ以外はシンの突拍子もない言葉の意味を知らない。
彼の問いかけに、周囲の視線は自然とパイロット最年少であるシン・アスカへ向く。
シンはティエリアをまっすぐに見つめ、ただ一言だけ。


「刹那が戻ってくるよ」


…と言った。
誰も予想しなかった言葉に、ティエリアもまた目を見開く。

「本当か…?」

4年前、スローネの【マザー】である『ラグナ』と共に、刹那は自ら消息を絶った。
唯一のホットラインであったシンによれば、『ヴェーダ』の二の舞を防ぐ為だと。
信じられないと語る目に、シンはラッセに返した言葉をもう一度返す。

「嘘付いてどうするんだよ」

シンが先ほどまで乗っていた機体は、エクシアの後継機。
調整自体が間違っているというのは、操るべきパイロットが違うため。

「00は、刹那が乗るべき機体だ。オレじゃなくて、刹那が」



 *  *  *



4年ぶり(いや、それ以上か)に見た刹那は、誰もの記憶からずっと大人びていた。
16歳であった少年が20歳を迎えたのだから、当然と言えば当然なのかもしれない。

「もう4年か。早いものだな」

ティエリアが手を触れた箇所から、コンソールに光が灯ってゆく。
刹那はその部屋に足を踏み入れ、初めて息をついた。

「…そのままデータベースに変換したのか」
「ああ。最初から造るよりも合理的だからな」

この部屋は、『ヴェーダ』と繋がる唯一の空間だった。
今はもう、ただの機械しか残っていない。

「……」

ここへ足を踏み入れるたび、彼は何を思っているのだろう。
刹那はティエリアに掛けるべき言葉を見失う。

(『ヴェーダ』は、ティエリアにとって家族であり友人だった。
誰よりも近い場所で、誰よりも近い存在だった)

刹那にとっての『ラグナ』と同じように。
そんな、半身とも呼べる存在を奪われるというのが、どれほどの辛さか。
シンと生き別れていた刹那には、想像に難くない。

「…諦めた、わけじゃない」

ぽつりと零された言葉に、顔を上げる。
「『ヴェーダ』を取り戻すことを、諦めたわけじゃない」
大丈夫だと思ったのは、間違いではなかった。

「それに、お前が戻って来た」

そっと触れてきた手を、刹那は静かに握り返した。

ありがとう、


ー 君は生きていてくれた ー



08.8.10

セカンド2ヶ月前の捏造。
相変わらず書きたいことしか書いてない。

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