ーーーコッチニ来ナイデ
近ヅカナイデ
私ヲ見ナイデ
見ナイデ
ーーー私ヲ、見ナイデ
硝子で隔離された部屋に眠る、少女。
「彼女が、最初に『ELS(エルス)』に取り込まれた人間です」
それだけを口にしてカタギリは黙してしまい、マネキンも言葉を発することは無い。
刹那とティエリアもまた、静かに少女を見つめた。
結晶化した『ELS』は、少女の半身を覆っている。
しかし彼女は呼吸器を付けており、右腕から伸びるケーブルの先には血圧を示す電子データが光っていた。
生きているのだ、彼女は。
「…彼女は、生きている。生きて、ここに居る」
呟くような刹那の声にカタギリはぐっと拳を握りしめ、彼へ向き直る。
「セイエイさん。彼女を、目覚めさせることは出来ますか?」
それは答えを求める問いではなかった。
カタギリは悔しさを隠さず、ただ胸の内を語る。
「当時、我々は彼女を救えなかった。今でも彼女を、救えていないんです。
彼女のご両親はこのコロニーに住んでいます。ここで働いておられるんです。
その子が目覚めたときに、すぐに会えるようにと」
けれど彼女は目覚めない。
彼女は生きていて、いつ目覚めてもおかしくない状態で、眠り続けている。
カタギリを見つめていた刹那の視線が、再び少女へと注がれた。
「俺は、俺に出来ることをするだけだ」
ーーー私ヲ、見ナイデ
見ナイデ
私ヲ見ナイデ
近ヅカナイデ
ーーーコッチニ来ナイデ
光を携えた若者へ、
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10.9.25
あなたが、最後の希望です。
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