注意!ルルーシュとC.C.が人外の黒さです。彼ら以外に酷い感じです。読んだ後の苦情は受け付けません。
パチン、と部屋の電気が落とされた。
残った光源は、パソコンのディスプレイのみ。
部屋の主が無言でこちらを睨んでいることを察して、C.C.は笑みを浮かべた。
暗闇では見えないが、笑っていることは気配で分かるだろう。
「良い機会だ。互いに偽りは捨てようじゃないか」
ディスプレイの明かりに照らされて、ルルーシュの怪訝な表情がよく見える。
C.C.はゆったりとした動作で、彼に近づいた。
「私の偽りの仮面は、私の持つ力が、この不死の身体だけではないこと」
「……」
「なんだ、何も言ってくれないのか。では勝手に言うぞ?間違っていたら言ってくれ」
白い両手をルルーシュへそっと伸ばし、背もたれの後ろから首元へ抱きつく。
こんなにも近くで接することは、そういえば初めてだ。
彼の耳元へ顔を寄せるように、C.C.は小さな声で謳うように紡ぐ。
「お前の偽りの仮面は、私よりもよほど数が多かったな」
回した片方の腕を前に出し、彼に見せるように指折り数える。
ディスプレイに映るものは変わらず流れていた。
「筆頭は、騎士団を纏める『ゼロ』」
幹部たちが知っているのは、ブリタニア人であることだけ。
素性を知るのはC.C.のみであるはずだが、もしかしたら探っている輩がいるかもしれない。
「アッシュフォード学園の生徒」
これはそろそろ捨てるだろう。
今となっては、邪魔になるのも時間の問題。
「枢木スザクの幼なじみ」
微妙なところだ。
今後次第では、捨てないのかもしれない。
「皇室から逃れるブリタニアの皇子」
これは昔からか。
上位皇位継承者がエリア11に集まっている今、やはり時間の問題だ。
「そして、ナナリーの"兄"」
密着している身体が、ほんの僅かな動揺を伝えてきた。
C.C.は肩を揺らして笑う。
「さあ、答え合わせの時間だ」
肩を揺らし笑っていたのは、C.C.だけではなかった。
ルルーシュは声を上げて笑う。
「ハハッ、よく気が付いたな?誰も気付かないと思っていたのに」
G o t t i s t t o t
神は死んだ。
左眼を抑えていた手をゆっくりと外し、吐けば凍る温度の声で彼は問うた。
「さて、説明してもらおうか?C.C.」
血よりも鮮やかな、天鵞絨よりも輝く朱に冒された、目。
残念なことに、それは彼の美しさを損なうどころか、人外の域にまで押し上げてしまっている。
問われた彼女は後ろの彼を振り返ることなく、言葉だけを返す。
「"ギアス"の段階が上がった、ということだ。…私はお前の"ギアス"の状態を、見誤っていた。
実を言うと、最初からON・OFFを操れる者は初めてだったんだ」
今回の非は私にあるな、すまない。
こちらを振り仰いだ常日頃高慢な彼女は、珍しく本心と表情が一致していた。
一致するときというのは大抵、誰かを嘲笑うときだったのだが。
彼は僅かに眉を寄せたが、1秒後にはため息をついて眼下を見下ろした。
「…俺には退化したように思えるがな。まあ良い」
しばらく左眼を使えないことが、不便だ。
仮面を付ける裏生活では大丈夫だろうが、日常生活の方は眼帯か何かをするしかないだろう。
まずは先の問題よりも、当面の問題。
眼下では、皇女の命を受けたブリタニア軍が虐殺を繰り広げている。
予定が狂ってしまった。
「これではさすがに、ゼロへの疑いばかりが濃厚だ」
慈愛の皇女と呼ばれた人間が、ゼロと会見した直後に虐殺を命じた。
疑わないのは、その場に居なかった人間くらいか。
部下たちに指示を出しておいて、さてどうしたものかと考える。
彼女がふいに笑い出した。
「ククッ、何もせずとも人間というものは、勝手に物語を紡ぐじゃないか。
お前を崇める者はお前を神に、お前を憎悪する者はお前を悪魔に仕立て上げる。
2つは同じものなのに、己の心次第で早変わり。人間は神を憎悪し、悪魔を崇めても気付かない」
神も悪魔も、つまりは『ヒトガタをした化け物』さ。
彼女は己の身を見下ろして、眼下の人間たちを嘲った。
「ここへ戻って来るまでに、策を講じて来たんだろう?ならば放っておくのが一番だ」
死んだ人間は何も言わない。
生きている人間だけが、声を発する権利を得るのだ。
彼は笑ってこう答えた。
「…ジャンヌ・ダルクか」
ぽつりと落とされた言葉に笑みを浮かべた彼女の真意は、彼にしか分からない。
常闇のドラグゥン
ドラグゥン:指導者(古代ウェールズ語)
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07.3.28