注意!ルルーシュとC.C.が人外の黒さです。ユフィも真っ黒。読んだ後の苦情は受け付けません。
















紅蓮弐式を押し止め、ユーフェミアの乗っていたKMFを大破させる。
生身でKMFへマシンガンを放つ彼女を見て、C.C.は堪え切れないといった風情で笑い出した。

「アハハハッ!意外と似合うじゃないか、『血塗れプリンセス』の称号も」

裾が半分以上破けた血みどろのドレスを纏う、元・慈愛の姫。
なかなか見れない光景だ、とそれを創り出した共犯者を振り返る。
ルルーシュは特に感慨も持たず、彼女を見下ろすだけ。

「お前はどっちが好みだ?生かすか、殺すか」

問われた事柄に、口の端を吊り上げて答える。
まったく、この男は本当に、これ以上ないほどに最高のパートナーだ。

「その前に、"ギアス"の新しい使い道を発掘してみてはどうだ?」

命令になってしまったのは、『日本人を殺す』という部分。
だがユーフェミアはほんの一時、その命令に拒絶を示したと聞いた。
ルルーシュは笑みを浮かべ、仮面を被る。

「なるほど?その手もあったか。滅多にない機会だしな」

ガヴェインから降り立ったルルーシュ…ゼロに、ユーフェミアは迷いなくマシンガンを向けた。
が、すぐに目を丸くする。

「まあ、貴方でしたの?日本人かと思いましたわ」

ホッとしたように銃を下ろした彼女は、ガヴェインの後ろの紅蓮を見る。
紅蓮のコックピットで、カレンはユーフェミアの目に宿る狂気にゾッとした。

「なぜアレをお連れですの?デヴァイサーは日本人でしょう?日本人は殺さなくてはならないのに」
「『黒の騎士団』は日本人の方が多いんだよ、ユフィ。それにもう、みんな死んでしまったよ」

ルルーシュとして返事をすれば、彼女は困ったように血塗れの指を顎に添えた。

「あら、困りましたわ…。では私は、貴方の邪魔をしてしまいますね」
「…え?」

ルルーシュは眉を寄せた。
(どういうことだ…?)
マシンガンのマガジンを入れ替えながら、ユーフェミアはにっこりと微笑む。
彼女の目は、紅くなかった。
("ギアス"の効力が切れた?こんなに早く?なぜ?)
C.C.もモニター越しに、その不可解なやり取りを見守る。
(まさか、ルルーシュの言葉か?)

彼は彼女に言った。
『みんな死んでしまったよ』と。

ルルーシュの頭脳は、慌ただしく幾つもの可能性を弾き出していく。
(命令に拒絶を示したのは、下せる命令の数が増えた合図…?)
ギアス使用者が完了を意味する言葉を発すれば、命令は遂行されたと情報処理されるのか。
いや、それでもユーフェミアの言動には理由が足りない。
彼女は血のこびりついた髪を払い、艶やかに笑ってゼロへ手を伸ばす。


「貴方が殺せというのなら、私はブリタニア人でも殺しましょう。
ゼロ…いいえ、ルルーシュ。わたしの、カ  ミ  サ  マ」














G o t t  i s t  t o t

                            は死んだ。2













ルルーシュは彼女を殺そうと握っていた銃を、また懐に仕舞った。
(これは"ギアス"の副作用か?しかし、面白い女だ)
堪えても漏れてしまう笑いを、ルルーシュは何とか腹の内に収める。

「ならば、俺の手を取るか?」
「はい!」

嬉しそうに頷いた彼女は、状況さえなければ花が綻ぶように可憐だった。
C.C.はその様子を見ながら、内心ではどうも面白くない。
そこへ敵機を示す、高い電子音。

「白兜か?!こんなときに!」

幾度となく、辛酸を舐めさせられた敵機。
あれのパイロットはルルーシュに負けず劣らず直情型で、この状況を見たら彼を撃ち殺す可能性が高い。
(いや、それは奴も知っているはずだな…?)
C.C.はふと我に返り、考え直した。

「ゼロ!白兜が来ます!!」
「…お前、何をする気だ?」

主に警告を発したのはカレンで、C.C.は警告ではなく疑問を投げる。
ルルーシュはガヴェインを振り仰ぎ、すぐに視線を空へ向けた。

「日本には、言霊信仰というものがあった。言葉には特別な力があると」
「…?」

彼の目の前でユーフェミアは首を傾げ、同じ動作をC.C.もなぞる。

「もちろん、名前にも力がある。それが特定のものを示すなら、なおのこと」
「…どういう意味だ?」

分かっていないらしいC.C.に仕方がないなと笑って、ルルーシュはユーフェミアへ水を向けた。

「ユフィ。あの白いKMFと、キュウシュウで出て来た飛行戦艦の名前は?」
「あれですか?どちらもシュナイゼルお兄様の特派のもので、白いKMFはランスロット。
母艦となっているあれは、アヴァロンという名前ですわ」

理解した瞬間、C.C.はまたも笑い転げたくなった。
彼女の後ろでは、電子機器が唸りを上げて稼働している。
(ああ面白い。こんな奴に会えたことを思うと、今までの時間はどうだって良くなる)
ルルーシュと出会って、まだ半年程度。
しかし日常としての密度は、生きて来た時間の何十倍にもなる。
(アヴァロン、ランスロット、ガヴェイン。役者はまだ居るのか)
しかしルルーシュは、アーサー王ではない。

ランスロットの反応はみるみる近くなり、すぐに機影が現れた。
その後ろには、例のアヴァロンが。
ユーフェミアは風を切る音にルルーシュの視線の先を見上げ、ぱちりと目を瞬いた。

「スザク?ねえ、ルルーシュ。スザクはどうすれば良いかしら?」
「ゼロ、大丈夫なのか?」

条件反射的にハドロン砲を撃ちながら、C.C.はルルーシュへ再度問う。
ルルーシュはユーフェミアを自分から離れさせ、仮面の奥で冷然と笑みを浮かべた。
(スザク。お前も裏切られてみると良い)
ランスロットのデヴァイサーであり、第3皇女の筆頭騎士であるかつての親友。
それが純粋な憎悪の渦を巻いて迫ってくる。
彼の主は少し離れた場所に移動して、ゼロの傍に居ない。
それを確認したらしく、ヴァリスの銃口がルルーシュへと向けられた。

「「ゼロッ!!」」

カレンの悲鳴とスザクの怒声が、皮肉にも重なって響く。
それでもルルーシュは逃げる素振りさえ見せず、鷹揚に両手を広げてみせた。


「さあ、裏切りの時だ。『ランスロット』」





引き金は、引かれなかった。























ニミュエとラッディ・マリー

王の魔女と血塗れの皇女





閉じる
07.3.31