GIFT.1





座学と作戦立案は、アルミン・アルレルトを於いて他に迫る者は無い。
戦闘において、目標に迫るスピードと刃の正確さはミカサ・アッカーマンが一番だ。
立体機動装置の扱いは、ジャン・キルシュタインがもっとも上手かった。
敵を攪乱する小回りの良さはコニー・スプリンガーが上だし、対人格闘ではアニ・レオンハートに及ばない。

これだけ並べれば判る通り、エレン・イェーガーには突出した特長がなかった。
だが座学は5番以内に入っているし、戦闘時のスピードと威力もそれなりにある。
しなやかな筋肉は柔軟な機動性を有しているし、対人格闘は2番目の成績だ。
それらを総合するとエレンの成績は200余名中5位であり、突出した才能が無い代わりに、彼には弱点も無かった。
(…いや、突出していないわけではないな)
ウォール・ローゼ南方訓練兵団教官キース・シャーディスは、訓練合間の休憩に入っている訓練兵を観察する。
前に述べた面々と、他に成績が彼らに近く優秀な者たちが集まって談笑していた。
その中でなぜ、キースが『エレン・イェーガー』を注視しているのかといえば、やや特異な事情がある。

エレン・イェーガーは、調査兵団団長エルヴィンと兵士長リヴァイ直々の勧誘を受けているのである。

そろそろ卒団を迎える第104期訓練兵たちを見る中で、キースはエレンが勧誘された理由を何となく理解していた。
まず、弱点が無いこと。
これは何事にも対応出来る兵士の特徴だ。
次、突出した才能が無く5位という上位に居ること。
心技体の"心"はともかく技体のバランスが取れており、能力を伸ばしやすい人間の特徴である。
そして3つ目は。

「あの、エレン。標的(ターゲット)の3番目の狩り方なんだけど、あれどうやったの?」
「俺はミカサの真似しただけだからなあ。ミカサ! ちょっと良いか?」
「なに? エレン」
「お前、3番目狩ったときどうやったんだ?」
ミーナ・カロライナとエレン、ミカサ。

「エレンはちょっとガスの使い方が荒いよね」
「うっ、マルコに言われると落ち込むな…。前、ジャンに教えてもらったんだけどなあ」
「え、そうなのか? 珍しいよなあ、ジャン?」
「俺に振るな、俺に! あん時はちょっと気分が向いただけだ!」
マルコ・ボットとエレン、ジャン。

「なあ、サシャ。お前いっつもどーやって標的見つけてんだ? 見つけんのすっげえ早いけど」
「へ? 私ですか? もちろん勘です!」
「…予想はしてたけど、勘じゃ真似出来ねえな。んじゃエレンは?」
「俺? 置いてるのは人間だから、大体のアタリ付けて行く」
「……なんか、そっちのが難しくないか?」
ユミルとサシャ・ブラウス、そしてエレン。

彼らだけではない。
訓練兵たちが何人か集まると、そこには必ずエレンの姿か名前があった。
中でも彼と親しいのが、初めに述べた5名だ。
彼らの内の誰かが必ずエレンの傍に居り、キースは訓練中に彼が1人になっているところを滅多に見ない。
(エレン・イェーガーの周りには、人が集まる)
それも当人の優秀さゆえか、優秀な人材が。
調査兵団トップから勧誘を受けていることこそ口にしないが、各兵団の話題になるとエレンの答えは一貫していた。

『俺は調査兵団に入るよ』

死に急ぎ集団と揶揄される調査兵団は、常に人材不足を抱えている。
壁外調査時の死亡率は調査兵団の教育方針により大幅に下がってはいるが、それでも人材不足には変わりない。
(今回、それが一気に解消されるかもしれないな)
訓練兵たちが何人か集まると、そこには必ずエレンの姿か名前がある。
彼が誰と話していても、その声はなぜか耳に届く。
これはキースや他の教官たちにも覚えの有ることだ。
そのエレンが、『調査兵団に入る』という。
おそらくそれに感化され、調査兵団を希望する訓練兵は多くなるだろう。

リーダーシップや指導者の素質は無けれど、104期生の中心はエレン・イェーガーである。
GIFT:
自らを示す才(英)/思想侵食(独)

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2013.7.20
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