毒を喰らわば、
(4.皿まで? それとも。)
【第60回壁外調査、損害報告書】
死亡・行方不明者…11名。
負傷者…18名。
内、新兵の死亡者…0名。
* * *
毒を喰らわば皿まで、という言葉がある。
一旦毒を食らうならば、その皿まで舐めるという意味だ。
「やっと腹括りやがったか、てめぇ」
遅ぇんだよ、と片眉を上げたリヴァイに、心外だな、とエルヴィンは苦笑した。
「時期を窺っていたと言ってくれ」
「ハッ、どうだか」
調査兵団本部、大会議室。
団長、兵士長以下、分隊長と各班班長が招集され、彼らは作戦や今後の展開に大きな変更があるのだと緊張した面持ちだ。
その中に混じって何故か新兵であるエレン、ジャン、アルミンも呼ばれ、場違いな状況にただ困惑している。
「ねえエレン。何で僕たちが呼ばれたの?」
「俺が聞きてえよ…。けど兵長に直接呼ばれたから、間違いではないだろ」
当人たちは当然のこと、会議室に揃った面々もまた、エレンたちの姿に困惑していた。
平然としているのは分隊長以上の者くらいだ。
「では、会議を始める」
よく通るエルヴィンの声が、会議室に響いた。
「必要なことだけを話そう。これより、調査兵団4分隊の再編成を行う」
ハンジたち分隊長が目を丸くしている様子を見るに、一切聞かされていなかったらしい。
だが、エレンたちが呼ばれた理由にはならない気がする。
(何だってんだ、一体…)
ジャンは板書が開始された正面の黒板を見つめた。
「まず第1分隊と第3分隊、第2分隊と第4分隊を統合し、新たに第1・第2分隊とする」
黒板に2つの分隊を示す文字、その下に『分隊長:(空白)』と書かれる。
「第1分隊分隊長にミケ・ザカリアス、第2分隊分隊長にハンジ・ゾエを任命する」
第3、第4分隊分隊長であった者は、新たな分隊の分隊長直属の班を率いることになった。
(あれ?)
並べて記された2つの分隊、その横に更に『第3分隊』という文字が追加される。
たった今、今までの分隊が再統合されたばかりではないか。
「さて、新設する第3分隊だが…」
ここに所属する者には、少々趣の異なる任務に着いてもらう。
意味が分からず、誰もがエルヴィンを見た。
場の視線を一身に受けた彼の眼差しは、何故かエレンへ向いている。
「第3分隊分隊長にエレン・イェーガーを任命する。所属する兵士は、第104期卒団兵22名だ」
調査兵団第3分隊、後の名を『104(イチマルヨン)分隊』。
彼らは市井の圧倒的支持を得ることとなるが、それはまた、別のお話ーーー
--- 毒を喰らわば、 end.
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2013.9.20
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