イージーライフモード!(2)

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物騒な連中を伸しつつ隙を見て、警察の手が入る寸前に逃げ出した先。
ペットボトル飲料を煽って一息ついたボーマンが、隣の男に笑った。
「あっはっは! そりゃあ残念だったなあ、ベリアル」
「ったく、ほんと萎えるぜ。シチュエーションは抜群だったのになぁ」
つまらなそうな顔をする従兄弟に、ボーマンは笑いが止まらない。
「ひっさびさに見たぜ、お前のそんな顔。けど相手が間違いないって分かったんだろ?」
収穫あったじゃねーかと言ってやれば、まぁなと気のない返事が来る。
「当分ここには来ないだろうし、どーするかねえ」
「俺たちも来れないだろうけどな」
遠くからサイレンの音が聴こえてくる。
「出し惜しみせずに、さっさと正面から掻っ攫えば良いじゃねーか」
「お楽しみは最後まで取っておく派なんだよ」
ベリアルの表情は、言葉とは裏腹に随分と楽しそうだ。
「そーいやお前、あっちの少年は何なの?」
「アイルのことか? 違うとこで喧嘩に巻き込まれてたのを見つけたんだよ」
「へえ」
ベリアルと違って、ボーマンのストライクゾーンは友人枠でもかなり狭い。
(そこに入り込むとは、中々やるねえ)
素人ではない切れ味のパンチを繰り出していたので、興味が湧いたらしい。
「穏やかに装ってるが、ありゃ狂犬だぜ。天性の才能ってやつだ」
磨けば光るものは、磨きたくなるのが人間というもの。
けどなぁ、とベリアルは喉奥で笑う。
「サンディに目ぇ付けられちまったんじゃ、難しいだろうなあ」
「あ?」
「サンダルフォンだよ。昨日会ったんだろ?」
学校で、と付け足してやれば、ようやく合点のいったらしいボーマンが目を見開いた。
「……はぁ?! お前、『サンディ』ってサンダルフォンのことかよ?!」
「あっれぇ、言ってなかった?」
「今聞いたよ!!」
全力でツッコミを入れるボーマンは貴重だ。
ベリアルは思う存分笑ってやった。
「しっかしお前の言うとおり、出し惜しみしてる場合じゃないかもなー」
「話戻すのかよ…」
「いや、だって来週からだろ? クラブの勧誘解禁」
「ん? そうだっけ」
新学年になり、新学期とは別にこの時期は騒がしい。
スポーツ系もそれ以外も基本は本人の意思ですべて進むが、若干の強制力が発揮されるものもある。
「ふむ…」
ベリアルはぺろりと唇を舐めた。
それはさながら、獣の舌なめずりのように。


End.
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2018.6.5
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