つい先日まで満開であったはずの桜が、もうほとんど散ってしまった。
肉親が眠る墓の前。
どうしたって時間の経過を感じずにはいられず、黄昏を背に立ち尽くした。
「ほんと…性格の悪いヤツ」
何で理屈に合ってんだよ、と少年が1人、諦観と共に笑う。
「…良いぜ。今度はオレが、お前に付き合ってやるよ」
手にされた紙片はその手により散り散りに破かれ、ちょうど来た海風に攫われた。
この景色も、見納めかもしれない。
「I'll bring you to your ship, and so to Naples,…」
彼はひとつ呟いて、墓地を後にした。
悪くないなと微笑んで。
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どうか良き終幕(フィナーレ)を