こちらの言葉など一切聞かず、切られた通話。
「あいつは…っ! だから、人の話を、聞けと…っ!!!」
反射でスマートフォンをぶん投げたくなったところを必死に堪えたが、握る手が震えるのは止められない。
怒りで途切れている声音に、誰からの通話か察しが付く。
「不破室長ですか?」
敢えて問うまでもないが、曲がりなりにもミーティング中である。
名前が判明した途端に周囲が諦めモードになるのも、見慣れた風景であった。
「すまんが、外省まで行ってくる。15分後には戻る」
若くパワフルで美しい上司を見送った部下たちは、一様に空気を緩める。
「…うちの姫様も、良い感じに振り回されてるよなあ。不破室長に」
「今日、外省って何かあったか?」
「さあ…あ、嘘。確か例のエジプト外交官が来るはず」
「それだ!」
「どっか中継してんじゃねーの? ワンセグか動画サイトか」
「ていうか実況されてる気がする!」
「これは来るな、王様ペア」
わいわい、と盛り上がり出すその部署を誰か見ていたなら、思ったはずだ。
お前ら仕事しろ、と。
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平凡で、傲慢で、美しき救世主(メシア)へ