マヒロとハカゼに連れられた"そこ"で、眠るヨシノを見た。
あの日に見えた刺青はもう無い。
尋ねれば、やっぱり見てたのかとマヒロが苦笑する。
もうすぐ5年だ、と彼は言う。
まだたった5年だ、と彼女が言う。
2人が全く同じ目をして笑うので、"それ"が意味する処をようやっと悟った。
(早く起きてやれよ、ヨシノ…)
だから世間に映される彼らは、いつでも走り続けているのだ。
右手に剣を(世界を救うための希望を、)
左手に盾を(一番大切なものを失う絶望を、)
言葉の干上がったエセルバートの耳に、マヒロの声が届いた。
シェイクスピアを好む彼はしばしばその台詞を引用し、彼を彼たらんとしている。
(ここで、その台詞を言うのか)
選定された詩はきっと、深く深く隠した内から漏れた、本心なのだろう。
「『"そうか、それなら、おまえたちには牢屋ではないのだ"。
"ものの善し悪しは考え方ひとつで決まる"』」
ーーー『"俺には、ここは牢屋なのだ"』
平凡で、傲慢で、美しき救世主(メシア)へ
2013.3.30
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オマケ