政府直轄本霊直属独立部隊《鏡》

<設定>




□大前提
時を遡ることは禁忌である。
上位の神々、あるいは時そのものを生業とする者の他は、『時間の枠内』で生きるすべてのものは、時を遡ってはならない。

□政府直轄本霊直属独立部隊《鏡》
詠んで字の如く。読みは「かがみ」だが、隠して話したい場合は「きょう」と呼ぶことも。
政府直轄の本丸所属分霊。便箋上『本丸』と言っているが、審神者は居ない。言うなれば政府それ自体が顕現主。
開戦後初期に危機感を覚えた本霊から生み出された。

実際の格…本霊>《鏡》分霊>刀剣男士(分霊)>政府職員、審神者を含めたすべての人間。
見かけ上の格…本霊>《鏡》分霊>顕現主の人間>刀剣男士(分霊)>その他。

平たく言うと特殊な分霊。本霊にもっとも近しく、刀剣男士よりも格上。
本霊のための防波堤であり、いちおうは刀剣男士のためにも存在している。人間のための存在ではない。
見た目は刀剣男士とまったく変わらないが、存在感が違うので審神者じゃなくても「あれはヤバイ(※意訳)刀だ」と判別可能。
視える系一般人が見た場合は、神々しく視えるので「神様」と勘違いする。

顕現された刀剣男士が折れた際、その魂を本霊へ還すかどうかの判断を行う。あまりに人間に近い分霊は還さない。
(例:恋愛を優先する、喜怒哀楽のいずれかだけが強い、誰かを呪った等)
また、極めた刀剣男士は本霊へ還さない方針で全《鏡》分霊が一致している。
本霊に還されない分霊は一旦《鏡》分霊に取り込まれ、ただの霊力の塊となった後に政府の防衛線維持に使用される。
ちなみに、《鏡》分霊は本霊に還さなかった分霊のあれやこれを知っている状態なので、本霊には還らない。
極めた刀剣男士に関する詳細は後述。

息をするように呪術や言霊やそれに近いものを扱える者が多い。
刀剣男士に対するいわゆる『ブラック』な罪を犯したものへの尋問や、罪に相応しい罰を与えたりもする。
刀のくせに! なんて口答えをすると、刀の斬れ味そのものの殺気をぶつけられて死ぬほど後悔することになる。
死なせてもらえないけど。

格そのものが本霊に近いので、刀剣男士に比べても格段に強い。
練度概念はなく、例え極Lv99であっても刀剣男士は《鏡》分霊に勝てない仕様。
なぜ本霊でもないのにチート仕様なのか。初めからこうだったわけではない。
自身や本丸刀剣に非がないのに強力な怪異や呪詛に襲われた審神者は、だいたい《鏡》部隊に助けられている。
この場合、本丸内全員という数の感謝の念(信仰)が《鏡》分霊に集まる。
対象の本丸が1つや2つならまだしも、1年も経つ頃には両手の数をとうに過ぎた。
善意には善意を、悪意には殺意を返す《鏡》は、感謝の形をした信仰を自身の強さに変換。
極実装前は極刀剣レベルの強さだったが、極が実装された今、《鏡》は極以上の強さとなっている。
「《鏡》が出てきたなら安心だ」という政府関係者や審神者、刀剣男士の無意識の信仰がそれを支えている。



歴史改変阻止戦争において、時の政府の要請に対し本霊たちは善意から協力を約束した。
彼らの『善意』とは、彼らをここまで大切に(あるいは刀として存分に)扱ってきた人々…つまり現時点を含めた歴代持ち主への善意である。
審神者や本丸、刀剣男士に関する検証時はまだ良かったけど、いざ軍として審神者制度が走り出したら、その善意を履き違える人間多くない?
今まで大切に使ってきてくれた持ち主たちへの恩返しとして、彼らの生きた証を守るためにもと協力を約したけど、
あなた(審神者)の指示を聞くのはあなたが持ち主だからであって、「あなたであるから」ではない。
古い、歴史あるアンティークや宝石はね、持ち主を選ぶんだよ。でも刀剣男士は持ち主(審神者)を選べないんだよ。
ゆえに自分たちの持ち主として相応しいのか、戦場で折れて誇りに思える軍師であるのか、見極められていることを忘れてはならない。
それを忘れた審神者の本丸はいわゆる『ブラック』となり、人の身を与えておいて「物」扱いする政府関係者も『ブラック』となる。
同じ人間が申し訳ありませんと誠心誠意謝ってくれる政府関係者や審神者も居るけど、
本霊だからって油断するのも駄目だな…、となった本霊から生み出されたのが《鏡》分霊。

なぜ《鏡》と呼ばれるのか。
それは善意には善意で、悪意には殺意で返すから。
自分たちを粗雑に扱う者には相応の扱いで返すし、力を貸そうなんて思わない。
刀剣男士が人間に好意的に創られているため、それを補うように人間そのものに対してドライかつ冷淡。
また、自分の本霊と刀剣男士に対しては「まあこんなもんだろ」と第3者目線だが、本霊が親しい別の本霊に対してはモンペ状態。
例えば本霊へし切長谷部に悪意が送られた場合、《鏡》へし切長谷部は「あの人間を棚に押し込んで圧し斬ってやる」程度。
それが本霊宗三左文字や本霊博多藤四郎に悪意が送られた場合、《鏡》へし切長谷部は
「あの人間を棚に押し込んで死なないように四肢を圧し斬り、再生させ、また圧し斬る、を10回は繰り返す」みたいなレベル。
誰かが誰かのモンペなので、まあ総合して《鏡》分霊は本霊のモンペ。

政府直属の討伐部隊という位置づけでもあるので、普通に遡行軍をひと狩り行こうぜしてる。
《鏡》は本霊のための分霊なので、新たな歴史改変地点の調査や改変された特異点には関わらない。
使う情報はあくまで各本丸と同じ。
必ず3部隊分は政府に残っているようにしてくれているので、政府で何かあったとかヤベェブラックの検挙とかヤベェ怪異の討伐とかにも対応してくれる。
感謝しかない。
ただし人間が原因のもの(遡行軍は除く)は、対価(供物。酒とか手入れ道具とかいろいろ)を提供しなければやってくれない。
無償なのは遡行軍の討伐と本霊の守護、当然だよね。
《鏡》の世話係の人間(情報提供や他部署との繋ぎ等もろもろ)は、
「この方々をなんと心得る! 人間を信じて戦ってくださっている御刀様であるぞ!!!」
が標準の狂信者レベルしか居ない。
むしろそのレベルじゃないと務まらない。
裏切られ続けたところに嘘をつかずにいてくれたとか、孤独から救ってはくれなかったけど見守ってくれたとか、
本当にどうしようもない状況から手を差し伸べてもらえた(と思った)人間がだいたいこのレベルになっていく。
ただし、お世話が「過保護」になると《鏡》側から容赦なく指摘されるので、心の強度も試される。

人間にドライだし刀剣男士にも結構ドライなので、立ち位置も意見も他から見ると圧倒的に平等。
政府内の重要会議には、必ず《鏡》が2振り以上同席している。



極めていない刀剣男士は、《鏡》にとっても同位体。
しかし極めた刀剣男士は、《鏡》にとって同位体ではなく同名のまったく違う存在。
なぜなら、極めた刀剣男士は禁忌である時間遡行を行った。
「遡行軍を倒すために」という大義名分すらなく、「自分が強くなるために」時間遡行を実行し、
本霊すら知らない自分自身や関係者の過去を見てきたから。
(もちろん「遡行軍を倒すために強くならなければならない」とはよく分かっている。が、侵してはならないルールだから禁忌なのだ)
そもそもがその遡行先、本当に正史の過去なの? 隔離された特異点だったりしない?
政府に都合の良い過去だったりしない? という疑惑も消えていない。
政府も本霊(《鏡》含め)も、すべてを互いに曝け出しているわけではないので。
極める前までの刀剣男士は、持ち主は本霊の持ち主だし、審神者は仮の持ち主。
貸し出されてるみたいな感じ。けれど極めると審神者を仮ではなく、本当に「持ち主」と認める。
つまりは本霊と同じではなくなってしまう。
なので《鏡》にとって極めた刀剣男士は自分ではない他の『何か』だし、持ち主が違うなら考え方も違うよね、で極め前の刀剣男士に対するよりもドライになる。
本霊が知らない本霊の過去を見聞きした上、それについて独自に解釈して違う人間を「持ち主」認定しちゃうので、
《鏡》には極めた刀剣男士の思考が理解できない。
《鏡》は本霊のための分霊であって、人間(審神者)のために存在していないしね。

ところで、実在していない刀の持ち主は誰なのか? それは当然、その刀の逸話が語る人物が持ち主である。
量産された刀の場合は、付喪神が生き残っている刀が話し合って分霊を形作っている。
この場合、本霊は分霊の要の逸話に一番近そうな刀が担っている。



《鏡》分霊のうち、最初期から顕現されていたのは初期57振りと山姥切長義。
山姥切長義については、政府には刀剣男士も最初期から存在していたが、本丸への実装は約4年後となった。
彼以外の後期実装刀の《鏡》は、本丸実装の半年前から顕現されている。
初期57振りはだいたい三日月宗近や鶴丸国永が纏めているが、後期実装組については政府内情に詳しい山姥切長義とにっかり青江が纏めている。
全刀剣を纏めるひと振りが必要な場合は小烏丸が出る。

刀剣男士より強いとはいえ、怪異や呪術については同系統の逸話が無ければ斬れない。
怪異や呪術から自分を守る手段が無い《鏡》は、御神刀組の本霊が創った術式札等を身に着けている。
他にも、政府の研究機関が創ったり編み出したりした術具を使っているらしい。
《鏡》分霊が折れた場合、その時点でその本霊は分霊の提供を止め、今後一切何の協力もしないという契約のため、政府側は必死。
歴史を守るための戦争をしているのに、なんでこんな内輪揉めになっているんだろうね。
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(次ページは《鏡》の小話)


2019.2.17
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