C'mon Sensation!! 2








とどのつまりは、皆酔っていたのである。







その日は皆の夜の予定が空くことが判っており、翌日は休日であった。
遊戯が以前に、KCデュエルタワーでモクバと立ち話をしたのも切欠だった。

「ねえモクバくん。突然なんだけど、海馬くんって酔ったりするの?」
「ほんとに突然だな…。ほろ酔いなら家で見たことあるけど、外では無いと思うぜ? 物騒だからな」
で、どうした? とモクバは遊戯の発言の真意を即す。
遊戯は素直に先を続けた。
「うん。《ATEM》くんと話してて気づいたんだけど。彼、来月で公式実装されて1年でしょ? 皆でお祝いしたいよねって話してたんだ」
そういえば、とモクバも思い出した。
「あいつ、すっげえ女受けと子ども受けしてるもんなあ。ネットでの盛り上がり具合が逆に怖いぜ…」
遊戯が思い立ったのも、それが元である。
初めて遊戯のデュエル講座に参加した子どもの第一声は、大抵が「武藤先生と王様って仲良しなの?」である。
ちなみに"王様"とは、一般ユーザーが呼び始めた《ATEM》の愛称だ。
「公式は何かやるんだっけ?」
「ないわけじゃないけど、そこまで大きくはないぞ」
で、本題は? とモクバは問う。
今度は遊戯もきちんと答えた。
「デュエル・リンクスだと、展開にある程度の広さが必要だからさ。《ATEM》くんの誕生日パーティーって名目で、ここのどこか借りれたら嬉しいなって」
「ほーぉ。ついでに飲み食い出来たら最高だ! ってことだな?」
「そう。さすがモクバくん」
「おだてても何も出ないぜぃ!」
と言いつつも、モクバは考える。
「ちょっと待ってくれ」
スマートフォンを取り出し、彼はいずこかへ電話を掛けた。
「もしもし…そ、モクバだ。兄サマの来月の予定で聞きたいことがあるんだけど、キサラ分かるか?」
どうやら相手は女性のようだ。
(新しい秘書さん?)
案外、モクバの秘書かもしれない。
「ーーサンキュー! じゃ、また後で連絡入れるぜ!」
彼が電話を切ったタイミングで尋ねてみる。
「もしかして、新しい秘書の人?」
「ああ。兄サマの第2秘書、兼オレの秘書カッコ見習いってとこだ」
「磯野さん、少しは楽になるね」
「…どうだろーなあ」
曖昧に笑ってから、モクバは話を戻した。
「で、《ATEM》の誕生日の話な」
「うん。どう?」
「さすがにテストフィールドは無理だけど、そこと隣の観覧用ルームを押さえてやるよ」
「本当?!」
「ああ。ただし、」
モクバは人差し指で唇に触れ、悪戯っぽく笑う。
「オレと兄サマも面子に入れろよ?」
遊戯は一二もなく頷いた。
「もちろんだよ!《ATEM》くんと話してると、海馬くんに聞きたいことが結構出てくるんだよね」
馴れ合いというものを積極的に避ける海馬の説得は、モクバに任せれば良いのだろう。
「食べ物の持ち込みって出来るかなぁ?」
「うち経由でケータリングならギリギリいけるぜ」
「あはは…あんまりお高くないと良いけど」
遊戯が頬を掻くと、モクバはふむ、とまた考えた。
「じゃ、うちと取引ある店のサイト一覧出すから、お前らで買えそうなとこ見繕うってのはどうだ? 代理購入して、後でこっちから請求書送らせるぜ」
「じゃあそれでお願いするよ。ごめんね、時間取らせちゃって」
「気にすんな。息抜きにちょうど良いしさ」
ひらひらと手を振って去っていくモクバは、会う度に貫禄が出てきていると思う。
(今まで積み重ねてきた自信の顕れ、ってやつかな)
ともあれ、《ATEM》の誕生日パーティーが開けそうだ。
遊戯は早速スマートフォンで友人たちへ連絡を取り始めた。
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2016.6.18
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