5.
「良いのか? 創造主サマの命令破っちまってよぉ」
「ちゃーんとデュエルはしたんだ。相手が武藤遊戯なら、創造主サマも諦めがつくってもんさ」
褐色の肌に白い髪、右目の下には小さくはない傷跡。
さらに解れの見える赤の装束まで瓜二つの男が2人、葬祭殿の屋根で寛いでいる。
「ああ、あれ王サマの器だった奴か」
どおりで、と呟いてから、男は自分と瓜二つの男を見遣った。
「で? お前、やっと名前貰ったっつったか?」
「ああ。俺サマは《ν(ニュー)》だ。うちの王サマが呼んでた名前そのまんまだけどな」
「…へぇ。その王サマのガキみてぇな奴、今度こっち連れてこいよ」
海馬がこの次元へ至り道筋をつけた日、《ν》は彼の創った道を辿ってこの次元へ迷い込んだ。
M&Wのルーツ情報を持っていない《ν》に、ここがどこかなど解るわけもなく。
不定形(当時はまだヴィジョンが無かった)で彷徨っていた彼を見つけたのが、この人相の悪い男だ。
神官共が煩ぇから王宮は行かねえ、とぼやく男は、自らを盗賊王と名乗った。
「ムリムリ。創造主サマ過保護だからさぁ、創造主サマと一緒じゃねーとうちの王サマこっち来れねぇの」
ディメンション・システムとのリンク設定で、つい最近《ATEM》へ制限されたルールだ。
肩を竦めた《ν》に、盗賊王はなぜか噴き出す。
「ぶはっ、マジかよ! やること為すことセトそっくりじゃねーか!」
神官たちは面倒だが、面白いことには首を突っ込みたい性分だ。
「じゃ、次にお前んとこの創造主サマが来たら、王サマんとこ覗きに行ってみるぜ」
海馬が額に青筋を立てる未来が見えて、《ν》も噴き出した。
それは是非とも、現場に居合わせなければ。
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2018.10.16
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