Sympathizer06... その邂逅もまた、必然
「初めまして、ティエリア・アーデ」
自分と瓜二つの顔をしたリジェネという人物は、驚愕するティエリアにくすくすと愉しげに笑った。
「君はガンダムのパイロットだったから。
『ヴェーダ』が流す情報を選定していたみたいだね」
「なに…?」
「だってそうでしょう?本来なら、もっとも深く関わっている君がもっとも知っていなければならないことだ。
イオリアの計画は」
くすくすくす。
何がそんなに愉しいのか、リジェネは笑みを収めようとはしない。
「…何が可笑しい?」
引き金に掛けた指に力を込め、ティエリアは問う。
すると、不意に相手の姿が消えた。
「?!」
一瞬後にすぐ隣へ現れた気配は、相変わらず笑っている。
「これで私も、『ラグナ』に手が届いた」
しまったと感じる時間さえ、惜しかった。
銃を向けようとしたティエリアに対し、リジェネはその右手を掴むことで自身の安全を確保する。
もっとも、この場で争う気はない。
《安心しなよ。直接手を出すことはしないから》
「!」
ティエリアの頭の中に、直接リジェネの声が響いた。
《これは脳量子波。ある特定の脳波を持つ者が使える、伝達手段。
うっかりすると、自分の心まで覗かれてしまうけどね》
これは『ヴェーダ』との交信手段だ。
つまり、『ラグナ』と『刹那』も同じということになる。
制限の掛けられていないティエリアの思考は、リジェネには易々と読み取れた。
彼の内にある重きを見て、思わず笑ってしまう。
「本当に大事だね、『刹那』が」
同じ境遇で産み出され、同じ目的のために生きるはずの存在。
それがどうして、ここまで違うのだろう?
「ねえ、ティエリア・アーデ。組織を再編させたのは何のため?」
問いながら、問い掛けて来るいつもの相手に言葉を投げる。
《もう、煩いよリボンズ》
"彼"がこちらの行動をトレースすることを分かって、リジェネは行動している。
もちろん、見せたくない手の内は秘匿済みだ。
こうして離れた場所に居るなら、聞かせたくないものを口に出せば良い。
「もしかして君は、本当はLv.7までアクセス出来たんじゃない?」
ティエリアは僅かな間を置いて答えた。
「…お前に答えるものはない」
「そう。まあ、私もそこは重要視しないけど」
今、『ヴェーダ』へのアクセス権はリボンズが握っている。
リジェネが入り込めるのは、せいぜいLv.5までだ。
引き金を引く気配がないことを確認して、リジェネはティエリアの手を離す。
…最初の目的は達した。
「じゃあまたね、ティエリア。シン・アスカによろしく言っておいて」
「なに…?」
現れたとき同様、リジェネは唐突に消えた。
残されたティエリアは、彼が最後に居た場所を呆然と見つめる。
「シンによろしくだと…?」
『刹那』を知らないのに、なぜあの男は彼の弟を知っているのか。
直接手を出すことはしないと言った、その意味は。
初めまして、同胞
ー 少しだけ羨ましいよ、君が ー
08.11.23
リジーはかなり徹底した傍観者な感じがします。
仲間との間に絶妙な距離を置き、同じく『世界』とも絶妙な距離を取ってそう。
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