自由の翼社所属モデル、エレン・イェーガー。
享年54歳、病死。

どうやら地獄に堕ちたらしい。







またきて地獄!







「んんー?」
見たことある風景だな、とエレンは手近な岩に腰を下ろす。
ガチャガチャという音に、懐かしの立体機動装置を装備していることに気がついた。
服装は死ぬ少し前、ティーン世代で流行りだったもの。
自分の頬を撫でてみて、この服装に相応しい年齢に戻っていることにホッとした。

傍にはあの、巨大で重厚でお世辞にも綺麗には見えない扉がある。

角があり金棒のようなものを持っている人間? が近寄って来たが、邪魔だとばかりにブレードの峰でぶっ飛ばした。
叩き斬らないだけマシだろう。
「俺はここで人待ってんだ。邪魔すんな!」
近くにあった似たような気配が、ざっとエレンから遠ざかる。
よしよし、と満足して、エレンは目を閉じた。
だって眠いんだ。



*     *     *



「「エレン!」」
聞き覚えのある複数の声に呼ばれ、エレンはハッと目を開けた。
そこにはエレンと世代を同じくした服装の、懐かしい幼馴染みが。
「ミカサ! アルミン!」
「エレンエレン、本当にエレンだった…!」
「久しぶり、エレン」
また会えて、本当に良かった…!
泣きながらエレンに抱きついた2人は、もっと前の生を共にした大切な幼馴染みだ。
今生ではついぞ、2人に会うことはなかった。
アルミンは胸を撫で下ろす。

「良かった…。天国の人に聞いたら、エレンは地獄行きだって言われて」
ミカサが納得出来ないってキレちゃって、地獄への通路を無双して来たんだ。
「はは、相変わらずすげーな」
離れたくないとばかりに抱き着いてくるミカサの頭を、ぽんぽんと宥めるように撫でてやる。
「わざわざ会いに来てくれてありがとうな、2人とも」
でもお前ら、早く戻った方が良いぞ。
エレンの言葉に、ミカサが思い切り首を横へ振る。
「いや! 私はエレンと一緒に居る!」
「ばか、何言ってんだ」
苦笑したエレンは、ミカサの顔を上げさせた。
「お前らも、前回は地獄だったんだろ?」
なら、凄く良い場所だっていう天国、折角なんだから見てこいよ。

本当は、ミカサだって解っている。
エレンと一緒に居たいというささやかな我が儘が、叶えられないことを。
「エレン、次は絶対にあなたを見つけるから」
「ああ」
「次に会ったら、天国がどんなところだったか教えるよ」
「ああ」
ミカサとアルミンの身体が、ほわほわとした光に包まれていく。
「リヴァイ兵長に、よろしく言っておいてね」
「エレンを泣かしたら削ぐって言って」
「ははっ、分かった」
消えゆく彼らに、手を振った。

「「またね、エレン」」

光の粒が、消える。
「ああ、またな」
小さく小さく呟いて、エレンはあの扉を見上げた。
「リヴァイさんを、待たなくちゃ」



*     *     *



ゴォン、と重い音を立てて、扉が開く。
「エレン…?」
ハッと目覚めたエレンは、瞬きをしながら声の主を見つめ返した。
「…リヴァイさん?」
呼び掛ければ、途端に強く…それは強く抱き締められて息が止まる。
「っ、」
「エレン…っ、この馬鹿野郎が!」
俺の方が歳上なのに、俺より20年も早く死にやがって!!
「…すみません、リヴァイさん」
本当に、返す言葉もない。
「ふふ、でもリヴァイさん、往生したんですね」
「…ふん」
まだ顔を見せてくれない。
肩が冷たいので、きっと泣いているんだ。
(ああ、でも)
エレンはリヴァイの肩にそっと両手を置く。
「リヴァイさん」
「……」
「リヴァイさん」
「……なんだ」
そして囁く。
宝物のように。

「キス、してください」

ずっと、ずっと待っていました、あなたを。
「俺、だって…」
寂しかった…っ!
ぽろぽろと溢れ出した涙を、リヴァイは苦笑と共に拭ってやる。
「ほら、顔上げろ。エレン」
「…っ」
すでに死んだ身であるけれど、交わすキスはとても情熱的なものだった。

「あの岩山の向こうに川があって、それを越えたら裁判所なんですって」
「ほう、ならとっとと片付けるぞ」

「ねえ、リヴァイさん。次はどんな風に生まれたいですか?」
「まず、俺もお前も人間だな」
「性別も同じままですか?」
「てめぇが女になるってんなら考えてやるが」
「…え、何でリヴァイさんが女じゃ駄目なんですか?」
「決まってんだろ。俺はてめぇに突っ込みたいんだよ」
「……あけすけ過ぎませんか」
「オブラートに包んだって、てめぇにゃ伝わらんだろうが。この鈍感野郎」
「うぅ…。女のリヴァイさん、絶対美人なのに」
「…てめぇ、自分の顔見てから言いやがれ」
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2014.7.12(さよならてんごく!)

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